中国車載電池CATLが「遡上戦略」を加速する背景 中間材料の炭酸リチウムの生産に自ら参入

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CATLはリチウム資源や中間材料の確保に全力を挙げている。写真は同社が一部権益を取得したコンゴ民主共和国のマノノ・リチウム鉱山(同鉱山の経営権を持つAVZミネラルズのウェブサイトより)

リチウムイオン電池の原材料コストが上昇するなか、中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が、サプライチェーンの上流に進出する「遡上戦略」を加速している。同社はこのほど、他社との合弁で炭酸リチウムの生産会社を立て続けに2社設立した。

1社目は1月27日、ステンレス鋼材大手の永興特種材料科技(ヨンシン・マテリアルズ)と共同で25億元(約454億円)を出資し、合弁会社を立ち上げたと発表。年間5万トンの生産能力を持つ炭酸リチウム工場を建設し、全量をCATLに優先供給する計画だ。

2社目は翌28日、クリーンルーム向けの静電気対策機器や機能性材料を手がける天華超浄科技(CANMAX)が、CATLとの合弁会社の設立を発表した。10億元(約181億円)の資本金のうち9割をCATLが出資して経営権を握り、年間10万トンの炭酸リチウムを生産。同じく全量をCATLに優先供給するとしている。

炭酸リチウムは車載電池の製造に欠かせない中間材料の1つだ。CATLが(材料メーカーからの調達に飽き足らず)自ら生産に乗り出す目的は、電池の生産コストを自社で最大限コントロールするためにほかならない。

炭酸リチウムの価格は1年で5倍超に

中国ではEV(電気自動車)の販売が業界の予想を超えるペースで拡大し、車載電池の需要が急増している。だが、サプライチェーンの「源流」に当たるリチウム鉱山では、生産量を即座に増やすことは困難だ。

そのため中間材料の炭酸リチウムも、電池メーカーの需要に供給が追いつかず、市場価格が急上昇している。非鉄金属の情報サービス会社、上海有色網のデータによれば、中国国内の電池向け炭酸リチウムの取引相場は1月28日時点で1トン当たり36万4000元(約660万円)と、1年前の5倍を超えている。

CATLは、すでに南米やアフリカで複数のリチウム鉱山の権益取得に動いている。それに加えて中間材料の生産も手がけることで、サプライチェーンの上流を幅広く押さえ、原材料の安定調達を図るもくろみだ。

今回手を組んだ1社の永興特種材料科技は、2017年から車載電池向け炭酸リチウムに参入。現時点の生産能力は年間1万トンで、2021年2月から年産2万トン規模の生産設備の追加建設を進めている。

本記事は「財新」の提供記事です

もう1社の天華超浄科技は、CATLにとって初めての提携相手ではない。2021年9月に天華超浄科技の関連会社に出資して子会社化し、アフリカのコンゴ民主共和国にあるマノノ・リチウム鉱山の権益の24%を2億4000万ドル(約277億円)で買収。これにより年間20万トンのリチウム精鉱の調達権を確保した。

(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は1月29日

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