中国の国有エネルギー大手の中国石油化工集団(シノペック)は1月29日、建設を進めていた中国最大規模の「CCUS」プラントが完成し、まもなく本格稼働すると発表した。
CCUSは「Carbon Capture Usage Storage」の頭文字で、二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯留を意味する。具体的には、石油化学製品や鉄鋼などの生産工程で排出されるCO2を分離・回収し、それを有効利用したり、地中深くに圧入して貯留したりする技術のことだ。
石炭、石油、天然ガスなどを大量消費する産業にとって、CCUSは生産工程の「脱炭素」に向けた現実的手段として期待を集めている。
今回完成したCCUSプラントは、中国国内では初の年間100万トン級のCO2回収能力を持つ。山東省にあるシノペック子会社の石油化学プラントからCO2を回収し、80キロメートル離れた勝利(ションリー)油田までパイプラインで輸送。それを油田に圧入し、原油の増産を図る計画だ。
大規模展開には多数の技術的課題
CO2の圧入で地下の原油を押し出す技術は、石油や天然ガスの採掘会社にとって目新しいものではない。だが、今回のCCUSプロジェクトがこれまでと異なるのは、その最大の目的が(原油増産ではなく)「CO2排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルを実現する」という国家目標の達成に置かれていることだ。
「このプロジェクトではCO2回収量の大幅な増加とともに、回収・貯留の技術革新を通じたコストダウンや事業効率改善が期待できる」。中国工程院(訳注:中国政府直属の技術分野の最高研究機関)の技術専門家の李陽氏は、財新記者の取材に対して書面でそうコメントした。
シノペックは、今後もCCUSに積極的に取り組む。第14次五カ年計画(2021~2025年)の期間中に、華東地区の石油・ガス田や江蘇省の油田を対象に100万トン級のモデル・プラントの建設を計画している。
だが、CCUSをさらに大規模に展開するには、まだ多数の技術的課題があるのも事実だ。例えば、CO2の濃度が低い排出ガスから高いエネルギー効率でCO2を分離する手法や、CO2を効率よく輸送できるパイプラインなどについて、これまでにないブレークスルーが待たれている。
と言うのも、現時点のCCUSのコストはあまりにも高いからだ。企業経営者が採算ベースで考えた場合、CCUSを推進するより、排出権取引市場でCO2の排出権を購入するほうが合理的なのが実態だ。
(財新記者:白宇潔)
※原文の配信は1月29日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら