EV(電気自動車)の販売の急拡大を背景に、中国のリチウムイオン電池業界は原材料や部品のサプライヤーから完成品メーカーに至るまで、業界を挙げて生産能力の大増強を進めている。そんななか、中国工業情報化省が11月18日に2本の規制案を発表し、(過剰投資や粗製濫造を防いで)電池業界を秩序ある発展に導くための布石を打った。
規制案は電池業界の各企業に対して、ただ単に生産能力を拡大するのではなく、技術革新とコストダウンに努めるよう要求。既存生産設備の前年の稼働率が50%に満たない場合、生産能力の増強を許可しない方針を打ち出した。ただし工業情報化省は、規制案には強制力がなく、電池業界の技術力向上と健全な成長が目的のガイドラインだと説明している。
同省は規制案で、(電池業界が達成すべき)多項目の技術基準も列挙した。例えば、EV向け車載電池モジュールのエネルギー密度は1キログラム当たり180Wh(ワット時)以上、設計寿命は充放電サイクル1000回以上、設計寿命時の残存容量80%以上、などである。
工業情報化省の規制案が発表されると、電池業界には衝撃が走った。「政府の意図は、企業の生産能力増強にブレーキをかけることではないか」という強い懸念を抱いたためだ。
「規制対応はたやすい」との見方も
それも無理はない。車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は、2025年までに年間生産能力を最低520GWh(ギガワット時)に引き上げると宣言している。同3位の中航鋰電科技は、2025年の年間生産能力を500GWhに、2030年には1TWh(テラワット時)に拡大する計画だ。
調査会社のデータによれば、2020年に全世界で出荷された車載電池および(再生可能エネルギー向けの)蓄電システム用電池は合計213GWhだった。それと比較すれば、電池メーカーの計画がいかに野心的かわかる。
電池業界の経営者のなかには、政府の規制案の影響を比較的楽観する向きもある。新興電池メーカーの蜂巢能源科技(SVOLT)の楊紅新CEO(最高経営責任者)は、財新記者の取材に対して次のように語った。
「規制案の内容は、仮に強制力があったとしても対応できる。技術基準に関しては、(高い技術力を持つ)大手電池メーカーならクリアするのは難しくない。また、目下の車載電池市場は需要に供給が追いついておらず、設備稼働率の条件を満たすのはたやすいことだ」
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は11月19日
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