BOP攻略:インドの6400円冷蔵庫に見る「整合性」《それゆけ!カナモリさん》

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BOP攻略:インドの6400円冷蔵庫に見る「整合性」《それゆけ!カナモリさん》

■インド6400円冷蔵庫の綿密な設計

 11月1日付日本経済新聞夕刊に、「6400円冷蔵庫 郵便局と販売提携 印家電大手、農村に配送網」という見出しの小さな記事が掲載された。

 「6400円冷蔵庫」とは、インド・ゴドレジ財閥の家電大手ゴドレジ・アンド・ボイス・マニファクチャリング社が開発した、「チョットクール」という製品だ。「チョット」はヒンディー語で「少し」を意味する。製品仕様は、記事では、重量は8~9キログラム。コンプレッサーを使わず、「サーモエレクトリック」と呼ぶ電子冷却方式で庫内をセ氏5~15度に保ち、野菜、果実、飲料を保冷できる。冷凍室はないと、紹介している。

 機能を必要最低限に絞り込んだ仕様が同じインドでタタ財閥が開発した自動車「ナノ」を想起させることから、「冷蔵庫版ナノ」と紹介しているメディアもある。しかし、機能をそぎ落すだけでなく、ターゲット層が生活の中でどのように使用するのか。そのために実現すべき仕様は何か。購入しうる価格で実現するために高価な部品と代替できるテクノロジーは何かというような探求を続けた過程は、「ナノ」の開発プロジェクト以上に意義深いといえる。

 詳細はJICA(独立行政法人国際協力機構)のWebサイトにゴドレジ・ボイス社 副社長G・サンドラマン氏の解説が掲載されているので、まずはリンク先を一読されたい。

 <BOP層向けの簡易冷蔵庫「チョットクール」の開発ストーリーとVLFMプログラム>

 上記は現在注目を集めるBOP(Bottom of the Economic Pyramid=開発途上国の年間所得3000ドル未満の低所得階層のことで、世界人口の約72%、約40億人存在するといわれる)へのアプローチ事例としても意義深いが、前掲の日経夕刊記事と併せて考えると、マーケティングの整合性がよくわかる。

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