BOP攻略:インドの6400円冷蔵庫に見る「整合性」《それゆけ!カナモリさん》
モノ作りとしての「チョットクール」の秀逸さはリンク先のJICAの記事でよく理解できるだろう。インドのBOPをターゲットとしてそのニーズギャップをしっかりとおさえていることが起点だ。JICAのページのG・サンドラマン氏の解説より引用すると、インド人の80%以上は冷蔵庫を利用していません。インドでは最安価格帯の冷蔵庫でも6,000ルピー(約13200円)はします。10億人を超えるBOP層は支払うことができませんし、多くは電気へのアクセスがありません。しかし、もし牛乳を保存したり、野菜や果物を傷むことなく保存したり、数本の冷たい水を得ることができれば彼らの日常生活は著しく向上することができますという状況だ。
ターゲットとその潜在ニーズを見極めた上で、どのようなポジショニングにすればターゲット層に受入れられるのかを考えた過程も秀逸だ。解説では、チョットクールは冷蔵庫ではありません!チョットクールは別の商品カテゴリなのです!とある。電気が通っていない場合もある。リビングで寝起きするような狭小な住宅に住んでいる。中古冷蔵庫のある家庭でも食料の長期保存はしないため水以外は保存されていないという状態。そんなターゲットに対して、「低価格な小型冷蔵庫を作りました!」というより、彼らの生活によりマッチする新しい製品カテゴリであると訴求した方が受入れられやすいのだ。
軽量なため、使用場所を固定しない可搬性がある。さらに、12ボルトの直流電圧で機能し、バッテリーでもインバーターでも、太陽エネルギーでも機能するため、電気が通っていなくても大丈夫。形状も絞り込まれた機能も、確かに従来のいわゆる「冷蔵庫」とは一線を画している。
ここまでで、インドにおける社会的・経済的なマクロ環境と、その中でのBOPというターゲット層と有り様。そして、ターゲットに受入れられるポジショニング、ポジショニングを体現する製品(Product)と、その販売価格(Price)が整合していることが判るだろう。
しかし、問題はターゲット層に製品が行き渡ることだ。解説にも、BOP層への道筋は簡単なものではなく、いくつかの挑戦に直面しました。広く薄く広がる市場、顧客の購買力の低さ、利用者側の認識の限界、大きな文化的多様性などですとある。中でも最も厄介なのは「広く薄く広がる市場」へのアプローチ方法である。
潜在ニーズはあるものの、新たなポジショニングの商品を説明し、販売するには販売チャネル(Place)の整備がカギとなるのだ。そこで、日経の記事にある「郵便局と販売提携」なのである。