機能的品質は当たり前、情緒的品質こそ強めよ--『「日本品質」で世界を制す!』を書いた遠藤功氏(早稲田大学ビジネススクール教授、ローランド・ベルガー会長)に聞く
ブランドは何か眼に見えない情緒的なつながりを感じさせる。それが品質を構成する重要な部分であり、その「情緒的品質」を強めることが大事だ。今までの一つの軸、機能的品質だけに頼っていては急速にキャッチアップされる。
ヨーロッパの会社がやっているような希少性を含めた情緒的品質を、品質の軸の一つとしてどう加えられるか。日本にとっては大きなチャレンジになる。買うこと、利用することによって、本当に精神的に満足する。さらにファンになるところまで、どう持っていけるか。新しい軸で勝負しなければならない。
──日本人は気配りなどが得意。
日本は情緒的品質に細やかに対応できる。物を作り込むところでもストーリー性はあった。ただ、機能的品質よりそれを軽視してきた。品質の定義をもっと広くすることだ。
現実をつぶさに見ると、もともとうまくやっている会社は戦略的にも商品でも、ストーリー性という価値を強調してきた。たとえば希少性を前に出す。現実にそういったストーリー性があるから買ってみよう、利用してみようとするのが、成熟した消費行動になっている。
──海外での日本品質の評価は機能性ですか。
日本信仰といえるほどだ。それに際立った情緒性が付加されるならば、日本の品質に対する信頼はもっと上向いていく。先週中国に行ってきた。日本人が思っている以上に日本の製品に対する信頼感は変わらずに強い。庶民にあこがれの商品として有名なウォシュレットにしても、こんなものを造れる国ってすごいという感覚に結び付いている。