機能的品質は当たり前、情緒的品質こそ強めよ--『「日本品質」で世界を制す!』を書いた遠藤功氏(早稲田大学ビジネススクール教授、ローランド・ベルガー会長)に聞く

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機能的品質は当たり前、情緒的品質こそ強めよ--『「日本品質」で世界を制す!』を書いた遠藤功氏(早稲田大学ビジネススクール教授、ローランド・ベルガー会長)に聞く

「品質の国」という日本の代名詞が揺らいでいるように見える。「見えない不良」に対しどう担保していくか。「差別化された情緒的品質」をどう創り出すか。これは行政や政治にも及ぶ問題だという。

──相次いで起こった品質問題の本質とは。

新しいものにチャレンジしているから品質問題が起きている、というのが正しい理解だ。過去と同じものを作っている中で、後ろ向きにしがみついて品質に問題を起こしているのではない。新しい価値に挑戦しているから起きている。

新しいものにチャレンジすれば、品質が一時的に劣化するリスクを伴う。さらにもっと新しいものにチャレンジし続け、その中で品質問題を起こさない努力を続けることが大切だ。このチャレンジ性と品質とを、どう両立させていくか。これが今の日本企業にあらためて突き付けられている課題だ。

──リスク管理の問題も含まれていました。

品質の問題とリスク管理の問題を切り分けて考えるべきだ。新しいことに挑戦すると、リスク管理の問題を伴うと想定しなければならない。品質問題は、経営としてはリスク管理の問題にもなってくる。日本の会社は品質のリスク管理が下手だ。これは社長の仕事であり、説明責任も取らされる。そこで後手に回るとつらいものがある。

品質問題は起こさないという理想の追求の一方で、現実への対応準備が必要とされる。現場に対してはつねに理想を追求させる。瑕疵(かし)はゼロにせよと。一方で、経営者としては問題が起こりうると想定して対応の準備をしておく。この二つをつねに裏表の関係で考えていく。

──「見えない不良」ということもあるようです。

「見えない不良」はレベルの高い問題だ。今や多くの製品でソフトウエアの比率が高まっている。これはいわば外から見えない。市場に出してみないとわからないことも起こりうる。実際に何かが起こったら、すぐに対応する俊敏性を身に付けなければいけなくなっている。

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