「ウクライナ侵攻」がもたらす経済への二重の影響 制裁の副作用はこういった場所に現れる
パンデミック、サプライチェーン(供給網)の大混乱、物価高騰に見舞われた世界経済は、ウクライナ危機でさらに先の見えない道をたどることになりそうだ。
ロシアのプーチン大統領が2月21日にウクライナ東部の親ロシア派支配地域にロシア軍の駐留を命じる前から、世界経済には打撃が広がっていた。対ロシア制裁とそれに対するロシアの報復の可能性を受け、株価は以前から下落、ガソリン価格も上昇していた。
ロシア軍が本格的な戦闘行為に入れば、エネルギーと食品の価格急騰からインフレ懸念が加速し、投資家心理が急激に冷え込むおそれがある。この組み合わせは、世界の投資と経済成長を脅かすものといえる。
驚くほど小さいロシアの経済的存在感
とはいえ、その直接的な影響は2020年に新型コロナウイルスの第1波で経済が急停止させられたときほど悲惨なものとはならないだろう。確かに、ロシアは大陸を横断する広大な国土に1億4600万人の人口と大規模な核戦力を持つ大国であり、世界の工場の操業を支える石油、ガス、その他資源の主要な産出国でもある。だが、世界の工場として複雑なサプライチェーンにがっちりと組み込まれた中国とは違って、世界経済における存在感はそれほど大きくない。
イタリアの人口はロシアの半分で、天然資源もロシアより少ないが、経済規模はロシアの2倍だ。欧州連合(EU)に対する輸出量も、ポーランドのほうがロシアより大きい。
「石油とガスを別にすれば、ロシアは世界経済の中では驚くほど取るに足りない存在だ」。オバマ政権で大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたハーバード大学の経済学者、ジェイソン・ファーマン氏はそう語る。「巨大なガソリンスタンドというのが、その基本的な姿といえる」。
もちろん、そのガソリンスタンドが閉まれば、そこに依存する人々はたいへんな影響を受ける。つまりウクライナ危機の経済的なダメージには、国や業界によって相当なばらつきが出るということだ。