「ウクライナ侵攻」がもたらす経済への二重の影響 制裁の副作用はこういった場所に現れる
新型コロナ禍で明らかになったように、ある地域での小規模な供給の停止は、遠く離れた場所で大きな混乱を引き起こすことがある。ガス、小麦、アルミニウム、ニッケルなどの局所的な供給不足と価格高騰の影響が、新型コロナ禍からの回復に苦しんでいる世界で雪だるま式に膨れ上がっていく可能性もあるということだ。
EYパルテノンのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は、「こうした背景状況に注目する必要がある」と指摘する。具体的には「インフレの高進、サプライチェーン問題、中央銀行の今後の動きや物価上昇のしつこさをめぐる不透明感などだ」。
さらにダコ氏は、「政治的な不確実性と物価の乱高下が経済活動の足かせになる」ことも明白だと付け加える。つまり、ウクライナ侵攻は経済活動の鈍化と、物価の上昇という二重の影響をもたらす可能性がある。
賃金と物価の連鎖上昇も
アメリカでは、消費者物価が1月に7.5%と40年ぶりの上昇率となり、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制に向け3月に利上げを開始するとみられている。ヨーロッパの紛争をきっかけとしたエネルギー価格の高騰は一過性にとどまるかもしれないが、賃金と物価の連鎖上昇に対する懸念に拍車をかけるおそれもある。
アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)の客員研究員でタフツ大学助教授のクリストファー・ミラー氏は、「爆発的なインフレを経験することになるかもしれない」と言う。
パラジウム、アルミニウム、ニッケルなど重要な金属の不足からインフレ懸念が強まり、パンデミックや半導体不足がただでさえ足かせとなっているサプライチェーンにさらなる混乱をもたらす可能性も考えられる。