「ウクライナ侵攻」がもたらす経済への二重の影響 制裁の副作用はこういった場所に現れる

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例えば、自動車の排ガス触媒や携帯電話、歯の詰め物に使われているパラジウムの価格は、ここ数週間で急騰している。パラジウムの世界最大の輸出国であるロシアが世界市場とのつながりを断たれる、という懸念が生じているためだ。鉄鋼や電気自動車用バッテリーの製造に使われるニッケルの価格も上昇が続いている。

スウェーデンのトラックメーカー、ボルボの最高技術責任者(CTO)ラース・ステンクヴィスト氏は、軍事衝突の正確な影響を見極めるには時期尚早としながらも、「極めて大きな影響がある」と話す。

シェルやトタルエナジーズといった石油大手はロシアに合弁事業を抱え、「(ロシアに)投資するヨーロッパで最大の外国企業」と自慢するBPはロシアの石油大手ロスネフチの大株主でもある。ヨーロッパの航空機大手エアバスは、ロシアからチタンを調達。ヨーロッパの銀行、中でもドイツ、フランス、イタリアの銀行は、ロシアの融資先に巨額の資金を貸し込んできた。

コロンビア大学ヨーロッパ研究所のアダム・トゥーズ所長は、「ロシアを徹底的に痛めつける厳しい制裁が発動されれば、ヨーロッパの取引先は多大な損害を被る可能性がある」と話す。

ロシアは中国に輸出先を切り替える

だが今後の動向によっては、世界経済に対する最大の影響は、後々になってようやく明らかになるものとなるかもしれない。

そうした帰結の1つが、ロシアが中国と経済的な結びつきを強める展開だ。両国は先日、新たなパイプラインを通してロシアが中国にガスを30年間供給する契約を結んだ。

ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフエコノミスト、カール・ワインバーグ氏は、「ロシアはエネルギーとコモディティ(国際商品)の輸出を全面的に中国に切り替えていく可能性が高い」と話す。

(執筆:Patricia Cohen記者、Jack Ewing記者)
(C)2022 The New York Times Company

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