「ウクライナ侵攻」がもたらす経済への二重の影響 制裁の副作用はこういった場所に現れる
天然ガスの40%と石油の25%をロシアから輸入しているヨーロッパでは、すでに光熱費が急騰しており、大打撃となる公算が大きい。天然ガスの備蓄はすでに能力の3分の1を切っており、ヨーロッパ各国の首脳らは、プーチン氏が政治的に優位に立つために供給を減らしたと非難の声を上げている。
食品価格の高騰も焦点だ。国連の直近の報告によると、食品価格は主にパンデミックによるサプライチェーンの混乱で10年ぶり以上の高値となっている。ロシアは世界最大の小麦生産国であり、ウクライナと合わせると世界の小麦輸出量の4分の1を占める存在だ。さらに小麦輸入の70%以上をロシアとウクライナに頼るエジプトとトルコのように、ロシアとウクライナへの小麦依存度が特に高い国もある。
そのトルコは今、経済危機の真っただ中にある。食品、燃料、電気料金が急騰し、50%近い高インフレの苦しみが広がる中、ウクライナ危機がさらなる重圧としてのしかかる。
侵攻がどう展開するか次第で影響は変わる
ウクライナ危機をウオッチするアナリストたちは、さまざまなレベルのシナリオを想定しているが、家計や株価などへの影響は、侵攻がどう展開するかで変わってくる。
ロシア軍は国境付近に留まるのか、それとも首都キエフを攻撃するのか。戦闘は数日で終わるのか、それとも何カ月も続くのか。西側諸国からの制裁はどのようなものとなるのか。これに対し、プーチン氏はヨーロッパへのガス供給を停止する措置を打ち出したり、狡猾なサイバー攻撃を繰り出したりしてくるのかなど、侵攻にはさまざまなシナリオが考えられる。
大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)の経済国家戦略ディレクター、ジュリア・フリードランダー氏は「段階的に展開していくと考えてほしい」と話す。「これはスローモーションのドラマのように展開していく可能性が高い」。