働くための能力については経済産業省が定めた「社会人基礎力」があり、企業の人事担当者なら誰でも知っているはずだ。
言葉を紹介しておこう。3つの能力分野と12の能力要素が定義されている。能力①は「前に踏み出す力(アクション)」であり、「主体性」「働きかけ力」「実行力」の3つ。能力②は「考え抜く力(シンキング)」であり、「課題発見力」「創造力」「計画力」の3つ。能力③は「チームで働く力(チームワーク)」であり、「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「情況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」の6つ。
ところが、これらの言葉は学生に対する評価に使われていない。「自分の言葉」「明るさ」「素直さ」などは対面したときの印象である。「柔軟性」や「ロジカル」という言葉はあるが、その内容は不明であり、おそらく発声や言葉の選び方などがかもし出す雰囲気ではないかと思われる。学力や職業能力ではなく印象による採点が多いのなら、面接を練習することで高評価を獲得することは可能である。
人間はなんらかの集団のなかで暮らしている。家族、学校、企業の上司・同僚、仕事の関係者。いずれの集団でもコミュニケーションが基礎的な能力になる。コミュニケーションとは、相手を理解すること、自分を理解してもらうこと、つまり聞くことと伝えることが基本である。
明瞭な声で「キャッチボール」
面接で企業が採点しているのは、「質問を正しく理解しているか」と「回答はわかりやすいか」の2点である。
「質問の正しい理解」でよく使われる言葉が「キャッチボール」だ。これは、質問を的確に理解して明確な返答を行う学生を評する言葉だ。
「会話のキャッチボール、質問の意図の汲み取り具合」(精密機器・300人以下)、「『言葉のキャッチボール』ができているか」(情報処理・ソフトウェア・301~1000人)は、質問を的確に理解して明確な返答を行う学生を評している。
「大きな声」という評価もある。学生のなかには大きな声量と勘違いしている者がいるが、「面接官に届く明瞭な声」という意味だ。学生のなかには聞き取れないような小さな声で話す者もいるが、これはアウトだ。逆に、鼓膜が破れそうなあいさつをして、大声がうるさい学生もいるが、これもアウト。小さくても大きくてもビジネスには使えない。
人事が評価する「大きな声」とは「相手に届く」「わかりやすい」「聞き取りやすい」という意味を含んでいる。
「笑顔や大きな声で対応できる、簡潔に筋道を立てて説明・回答できる、といった学生」(情報処理・ソフトウェア・1001人以上)
「明るい表情で、声も大きい学生。回答が理路整然としている学生。入社への熱意が感じられる学生(企業研究していそうで詳しい)」(食品・301~1000人)
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