「週4会社員」で大学院に通って彼女が得た気づき 学び直しは「企業にも大きな恩恵がある」理由

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しかも、デザインツールを使ってモノを作れたことで、すごく重宝してもらえた……という想定外もありました。周りのメンバーはみんないろんな仕事をしてる方々だったんですけど、実際に手を動かせる人って実はあんまりいるわけではないんですよ。頼まれることをやっていくうちに、イタリアまでいった感覚でしたけど、トップデザイナーたちが作るのを見られたのは、いちデザイナーとしてもとてもいい経験でした。これも、そういう場じゃないとめぐってこないチャンスですよね。

中小企業こそ社員に学び直しの機会を

角田:アトラスは、研究者の支援をされていますね。その分野でイノベーションを推進したい想いは?

齋藤:そこはもちろんあります。ただ、実際はなかなか難しい。

角田:そうですよね。だって予算がない団体も多いですもんね。

齋藤:そこなんですよ。医学系や大きな学会であればシステム導入に予算を割けるのでシステム会社にお任せみたいになるんですけど、たとえば人文系とか社会科学系の小規模の学会はIT化が遅れている現状があります。今、研究者ってすごく追い詰められていると思うんです。予算がなかなかおりず、学生の面倒をみて、事務作業をして、研究をする。そういう人たちが研究するための時間を捻出するシステムを作っていきたいんです。

ーー「学び直しも学会のIT化も、結局お金があるところが有利」……という話なんでしょうか?

齋藤:でも、大きい学会になると、そのぶん「しがらみが多い」という問題も生まれるそうで。逆に言えば、小さな学会だからこそ話が通りやすいということもあると思います。

角田:たしかに。でも、企業も同じですよね。大企業は資金的に余裕があるかもしれないけど、その分、「大企業病」がある。「お前が言ってることは正しいんだけど……」とみんな言うけど、誰も応援はしてくれないみたいな。

僕もTBSにいた頃、「特例はダメ」と言われることが多くて、結果的に退職することを選びました。学び直しも、実は中小企業のほうが、社長の鶴の一声で推進できるという意味では、大企業よりも有利なのかもしれませんね。

齋藤:そういうことを中小企業が推進していくのはすごくいいことだと思います。

角田:IT企業はそういう会社も多そうなので、そこから日本がよく変わってくれたらいいですよね。(構成:岡本拓)

齋藤氏と角田氏(撮影:尾形文繁)
角田 陽一郎 バラエティプロデューサー/文化資源学研究者

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かくた よういちろう / Yoichiro Kakuta

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビ入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社goomoを設立。2016年にTBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出など多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院博士課程にて文化資源学を研究中。著書:小説『AP』『最速で身につく世界史/日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。

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