齋藤:それは大変そう……(笑)。でも、大変なこともあったけど、学べたこともたくさんありました。授業は新鮮で楽しかったし、自分の場合は、「研究者の視点を知ることができる」という、弊社ならではのメリットもありました。うちの会社はお客さんが研究者で、論文を書いている方が多いので、自分が実際にそっち側を体験したことで「こういう感じで論文を探して、論文を書いてるんだな」と実感できたんです。
もちろんそれまでも研究者から話を聞いたり、彼らが置かれた情報に関するニュースの収集などはしていましたが、あくまで情報でしかないわけで。自分が実際にしてみたり、指導教員が大会運営で忙しそうにしているのを見ることで、研究者の気持ちが以前よりも理解しやすくなったと感じています。
学び直しの恩恵は周囲にも還元される
角田:学び直しで得たもの、という話になったので伺いますが、ほかにはどんなものがありましたか?
齋藤:大学院で学んだメソッドをそのまま導入して……というのは、実際できないことも多いんですけど、ほかのメンバーの業務に対し、いろいろ口を出せるようになったと感じています。
角田:「システムデザイン的に言うと……」とまでは言わないけど、学び直したことで、論拠が立つと言いますか。
齋藤:そうですね。もちろんほかのマネジャーも、マネジメントの勉強をして資格を取ったりもしているんですけど、私も大学院で学んでいるので「こうだよね」って話せたり、「モノを作るうえではこういうふうに考えたほうがいいよ」って言えるんです。
角田:学び直しというと個人に還元されるイメージがありますけど、実際は周囲にも波及していると。
齋藤:社員の数が少ないのもあると思いますけどね。あとは、これはうちの会社に限った話ではないと思うんですけど、「転職じゃなくて、大学院にいくのも選択肢のひとつだな」と思うようになりました。
角田:と言いますと?
齋藤:IT業界って、すごく転職が多い業界なんです。たぶん、「同じ場所にいると、同じ業務しかできない」というのが根底にあるんだと思います。でも、学び直しをすれば、会社にいたままほかの経験ができたり、別の職種につくためのステップになるというか。
角田:たしかに、「別の職種をやってみたいけど、会社が『専門性がないから』『ほかにもっとできる人がいるから』と言って、許してくれない」みたいな人は多いでしょうね。その結果、「辞めたくないけど、ほかの会社に行くしかない」と辞めていき、会社も人財を失ってしまう。
齋藤:まさにおっしゃるとおりなんです。
角田:でも、学び直しなら、会社を辞めなくても、人生を変えられる。とてもいい考えですね。
齋藤:もちろん、どういう大学院に行くかにもよると思いますけどね。そういう意味で私は、大学院を通じて貴重な経験をさせてもらえたほうだと思います。たとえば、イタリアのデザインウィークへの参加。世界的な大企業から中小企業まで、いろんなところがデザインの展示発表をするイベントなんですが、そこに私も、大学のチームの一員として参加しました。
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