ネスレが30万のクレームを収束できた理由 健全なNGOとの協働は、自らのブランドを強くする

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では、こうしたNGOとどう付き合っていけばいいのだろうか。アクセンチュア、ワールドビジョン、パートナーリング・イニシアチブらが2008年に実施したNGOに関する共同調査によると、企業がNGOと協働する目的は以下の6つのタイプに分かれるという。

1.スポンサーシップ…寄付など
2.マーケティング(コーズ・リレーテッド・マーケティング)…売上の一部を寄付に充てる活動などで、消費者の購買行動を社会貢献に結び付け企業のイメージアップと収益拡大を図る
3.キャパシティ・ビルディング…主に途上国における従業員エンゲージメント、社内外の能力開発
4.ブローカー…大規模なスケールでのイニシアチブの促進、地域パートナーシップの促進など
5.アドボカシー…問題解決に向けたキャンペーン、政策変更を目的とした戦略的パートナーシップなど
6.ビジネス…アドバイザリー・サービス、社会的企業開発、BOPなどの技術的開発支援)

上記から、自社がNGOとどのタイプの協働が必要なのか、可能なのかを検討すると進めやすくなる。では、欧州の企業はどのようにNGOを選び、協働しているのか具体的にご紹介しよう。

まず、以前の連載でも取り上げた英国の老舗スーパーマーケット、マークス&スペンサーの「ショワッピング・キャンペーン」の例(→「ストーリーで共感呼ぶ、ユニリーバのCSR」を読む)。協働する国際NGOオックスファムでは、衣服販売で得たお金を人道援助や世界の貧困撲滅に使用している。M&Sは、他にもNGOやチャリティ団体など14団体とのパートナーシップを組み、大きな効果を発揮している。

ネスレやブーツも協働で成果を上げる

NGOからの批判が協働のきっかけになったのが、スイスに本社を置く世界最大の食品・飲料会社「ネスレ」だ。主力商品「キットカット」などのチョコレート製品の原料として使用されているパーム油は、インドネシアのボルネオ島のアブラヤシのプランテーションで採取されていた。

同社が原料として使用していたパーム油の調達先が、熱帯雨林を違法伐採し開発していたという実態が報告され、そのためにオランウータンの生息地が危機的状況になったとして、2010年にグリーンピースからビデオによるキャンペーンで批判を受けた。

ブランドの危機に瀕したキットカット。ネスレはNGOとの連帯で乗り切った。日本企業はこうした取り組みができるか

このキャンペーンビデオは約2カ月で150万回再生され、ネスレは世界中から30万通を超える消費者からのクレームに晒された。

そこで、ネスレは問題のあるインドネシアのサプライヤー「シナール・マス」からの調達を中止し、さらに同年5月に国際NGO「ザ・フォレスト・トラスト(TFT)」とパートナーシップを締結した。

ネスレは、TFTと「パーム油に関する責任ある調達ガイドライン」を共同で作り上げ、熱帯雨林を破壊しない持続可能なパーム油の調達開始を発表した。

2013年9月までに調達したすべてのパーム油をRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)の認証100%へ変更し、サプライチェーンの改善にも努めることで、ネスレは大きな批判をNGOとの連携で早期に収束することができた。

NGOの専門知識を積極的に活用して協働しているのが、英国のドラッグストアチェーンであるブーツUKだ。同社は、NGO「マクミラン・キャンサー・サポート」とパートナーシップを組み、ガン患者への専門的な医療、情報や金融支援を行っている。ブーツはマクミランから、ガンに関するさまざまな情報を英国の各店舗で顧客に提供。それまで以上に多くの人々にガンに関する情報や知識が届けられるようになった。

いくつかの店舗には、ブーツ・マクミラン・ビューティー・アドバイザーと呼ばれる相談員を置き、ガン治療の副作用に対してどのように対処するかなどのアドバイスも行っている。また、同社の従業員は、マクミランが行う地域でのイベントをボランティア活動としてサポート。各店舗では顧客から寄付金が集まり、マクミランはガン患者のサポートや情報収集にかかる費用を調達している。

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