地元民も知らない「山城」で覚醒、驚異の町おこし 千葉県多古町、「何もない町」が日本一になった

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多古町で発行される御城印。説明書きも添えられている(編集部撮影)

御城印をデザインするのは、全国の1000超の山城を訪れた歴史・山城ナビゲーターの「山城ガールむつみ」こと、宇野睦さん。むつみさんはデザインの際に山城を1つひとつ丹念に調べ、山城にまつわるストーリーを紡ぎ出す。

これには自治体の文化財課や教育委員会との連携も欠かせないという。そうすることによって、史実に基づく描写が可能になり、地元との結びつきが生まれるからだ。

御城印は道の駅などで販売され、価格は300円。そのうち5%は保存活用会に還元される。保存活用会はその資金で山城の整備を進め、整備後は「山城跡」の標柱や案内板も立てるようになった。

多古町の御城印は現在、13まで増えた。そして掲げたのが「日本一の御城印の町」。御城印は毎年12月に横浜で開かれる「お城EXPO」などでも販売。現在では多古町のふるさと納税の返礼品にも採用されている。

「お城開き」を冬の定例行事に

2021年11月には、多古町で日本初の「お城開き」が行われた。室町時代の1400年代に建設されたと推定される「物見台城」。その遺構の周辺で草刈りや枝払いをして、最後に案内板を立てた。

参加したのは地元の人たちだけではない。東京や神奈川など周辺の都県からも熱心な山城ファンが集まった。

東京・八王子市から電車とバスで片道2時間以上かけて参加した男性は、「山城を多く見ていると、ここが入り口、土塁、矢倉台などと分かるようになる。建物が残っていない分、かえって想像力が膨らむ。自分の手で山城を整備できるならと思って参加した」と語る。

「お城開き」によって整備された山城。「虎口」と呼ばれる入り口のあたり(記者撮影)

城郭には熱心なファンが多く、「攻城団」「城びと」など著名な情報サイトがある。お城開きの開催にあたっては、こうしたサイトにイベント情報を掲載して集客。その結果、お城開きの参加者は約50人を数えた。

保存活用会では、お城開きのイベントを毎年開催する予定だ。実際に山に入り、草刈りを行うお城開きは、夏には暑さや虫対策が必須。そのため秋や冬がシーズンとなる。

春や夏のイベントが多い観光地にとって、お城開きは観光の通年化に一役買いそうだ。海開きならぬ、城開き。これが今後各地に広がっていくかもしれない。

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