地元民も知らない「山城」で覚醒、驚異の町おこし 千葉県多古町、「何もない町」が日本一になった

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山城は、主に鎌倉時代から戦国時代にかけて築かれた城。山の地形を生かしながら周囲に堀をめぐらせ、盛り土などを行い、敵の侵入を防ぐ。こうした山の城郭が、全国各地に築かれた。

多古町は古くから稲作が盛んで、水運交通の要所だった。こうした背景から町には数多くの城郭跡があり、その数は34に及ぶ。住民にさえ何のへんてつもない町と思われていた多古町は、実は「山城の町」だったのだ。

だが、城とはいっても整備されていなければただのやぶ。堀や盛り土の跡も、多くの人からは単なる「地形」にしか見えない。千葉県では30年ほど前に山城の調査がなされ、教育委員会では大まかな実態が把握されていたが、住民の間では山城の存在すら認識されていなかったという。

「発信ベタ」に歯がゆさ感じ一念発起

その山城に光を当てたのが、のちに保存活用会の事務局長となる小室さんだった。小室さんは仕事で多古町とかかわったことをきっかけに、山城の可能性に着目。町議会議員である高坂恭子さんに声をかけた。

ほかの地域から多古の家に嫁いだ高坂さんは、多古には魅力が多いのに「発信ベタ」であると歯がゆさを感じることも多かった。そこで町の観光ボランティア養成講座や歴史講座の受講生らに呼びかけ、2019年12月に保存活用会を立ち上げた。

草刈りや枝払いを地道に行った(記者撮影)

山城の跡地は現在ではほとんどが私有地だ。保存会のメンバーは地主の了解を取り付け、敷地に入り、生い茂った竹を伐採し、草を刈り、倒木を取り去っていった。すると、少しずつ遺構が姿を見せ始めた。遺構に行き着くための散策路も整備した。保存会はこうした活動を地道に続け、メンバーは約20人まで増えた。

観光地としての活性化を目指し、保存活用会ではユニークな仕掛けも打った。「御城印」(ごじょういん)の発行だ。和紙製のポストカードサイズの「来城記念証」。いわば神社仏閣の参拝記念に押印される「御朱印」のお城版だ。

御城印には城名のほか、地形、城主の家紋などに由来するデザインが施され、城とデザインに関する説明書きも添えられている。

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