「40代でがん」会社で公表しながら働く彼女の理由 頭をよぎった「退職」をこうして乗り越えた

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4月の切除手術後、がんのステージ1で転移はないとわかった。だが、切除後の痛みは約1年続いた。再発を防ぐための放射線治療は25回。時間単位の有給休暇やスーパーフレックス制度、在宅勤務を組み合わせて乗り切った。現在は定期検診のみだ。

「放射線治療は自宅から徒歩約10分の病院で受けましたが、治療中は10分歩くのもつらくて、在宅で本当に助かりました。一方で、上司が『有給休暇の日数が足りなくても何とかなるから、両立支援制度を使ってやってみろ。辞めるな』と、励まし続けてくれました」(大登さん)

「どうして私だけが」という思いが消えた理由

大登さんは、がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars(キャンスターズ)」の活動にも支えられてきた。大登さんは2019年3月の結成当時からのメンバーで、2021年10月末時点で11人が活動している。

「家族には病気にまつわる不安や愚痴はこぼせません。ですから、それらを受け止めてもらえる仲間が必要でした。自分と同じように治療と仕事を両立している同僚なら、何でも話せるかなとも思いました」(大登さん)

ちなみに「Can Stars」とは、がんを表す英語「cancer」と、同コミュニティや参加者が社会のために今後「できる」ことを示す英語「can」が重ねられ、サッポロビールのシンボル「☆(スター)」を組み合わせたもの。

活動は2カ月に1回実際に集まる形で開始。「ピアサポート」と呼ばれるが、経験者同士が闘病体験を共有して支え合ったり、同社の両立支援制度についての意見交換、他企業のがんコミュニティとの交流などを行っている。

「ピアサポートは主に診断から治療の経緯、現在の思いについて話します。他人の話を聞くことで、自分と同じ不安や葛藤を抱えていたんだなぁとか、自分以上に大変な治療を経験されてきたんだと知ることができ、お互いにいたわり合えたり、温かな気持ちで接することもできるようになりました」(大登さん)

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