「40代でがん」会社で公表しながら働く彼女の理由 頭をよぎった「退職」をこうして乗り越えた

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この時点で息子たちにも伝えると、当時は口数少なく、「うん」「お金」「めし」のほぼ3語の会話しかしなかった長男は絶句。いつもマイペースな次男は急に怒ったような顔になり、「手術したら治るんでしょ!」と声を荒らげた。

子育て中の共働き家庭なら、誰もが同じような状況に直面するだろう。

半日単位の有給休暇と在宅勤務で乗り切る

「治療と仕事と子育てをすべてやりきれるとは思えない……」

最初の告知を受けた際、大登さんはまず夫にがんの可能性を伝え、不安を吐き出した。普段から家事分担にも協力的な夫は、聞き役に徹してくれた。だが、解決策がすぐに見つかる話ではなかった。

戸惑う彼女を会社につなぎ止めたのは上司の言葉だ。

「辞めなくていい。会社の(治療と仕事の)両立支援制度を利用してやってみろ。もしも、それで日数などが足りなかったら、改めて相談しよう」

自社に治療と仕事の両立支援制度があることは知っていたが、詳細はよく知らなかった。

支援制度は、2017年12月から始まった同社の「働き方改革」や女性活躍の推進などのダイバーシティの確立、企業グループとしての健康経営の推進などを背景に、その拡充が進められていた。

サッポロビールの両立支援制度(資料:サッポロビール提供)

大きな特長は、がん以外の疾病も対象に、経験者の社員と人事部が協働し、治療と仕事の両立支援ガイドブックを作成している点。がん当事者の視点が入ることで治療に専念する選択肢も示し、匿名性に配慮しながら、闘病体験談を社内イントラネットで共有するなど、全社員への啓発と周知を図っている。

大登さんは、半日や時間単位で取得できる有休休暇、テレワークによる在宅勤務制度がとても役に立ったと振り返る。

「有給休暇は年間20日で、翌年にも繰り越せるので40日間ありました。それを半日単位でも利用できるので、半休を80日分も使えるのが気持ちのうえではありがたかったです。支援制度がない時代にがんを経験された先輩たちによると、入院や治療で3カ月から半年近く休まざるを得なかったそうですから」

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