そんなのは当たり前で、投資家が売ったのだから、経済が悪くなり、市場のムードが悪くなったはずで、では、どのように経済が悪くなったのか、どういう理由で市場のムードが悪くなったかが重要だから、結局、市場が下げた理由はやはり存在するのではないか、と反論するのが普通だろう。しかし、この議論は間違っている。
みんなが売りたくなって、売ったから下がった
今回の下げのポイントは、経済的にファンダメンタルズとして株価への評価を下げる理由はないが、みんなが売りたくなったので、売って下がったということだからだ。より根本的には、下がる理由がなく下がるのは、これまで上がる理由がなく上がってきたからなのだ。理由なく下がれば理由なく下がる。それが基本構造だが、さらに言えば、理由なく上がれば、それは必然的に下がるという帰結となる。上がってしまったから、あとは下がるしかないのだ。
もう一度整理しよう。9月前半までの上昇は、経済的なファンダメンタルズの理由がなく上がってきた。とりわけ、日本においてはそうだ。GPIFというネタで上がってきただけなのだ。もう少し正確に言えば、世界が上がったのに、日本が出遅れていて、日本株も買いたい投資家が、GPIFという理由をつけて買った、ということだった。
日本株を買う可能性のあるほとんどの投資家は、日本株を枠一杯に買った。トヨタ自動車など円安関連、輸出銘柄はとことん買った。この結果、もはや日本株、とりわけ輸出株を買う余地がほとんどなくなったのだ。これにより、日本株の下落は準備されたということなのだ。
今回は、円安となっても思ったほど株価が上がらない。そして、大幅円安の反動で、円高に戻ったときには、日本株が大きく下がる。為替の株価への効果は非対称になったのだ。これは、前述の日本株買いすぎが要因である。円安関連、輸出関連のトヨタは、ほんとうに目いっぱい買ってしまった。
だから、円安が進行して、「円安には株高」、という経済実体とは無関係な連想ゲームで株価が上がった過去が再現しなかった理由は、「だから円安になったら日本株は買い」、というパブロフの犬のような海外投資家が、そう行動したくても、もうこれ以上、トヨタを買えない状態になっていたからだ。
この結果、円安が進んでも日本株高にならないという状態が生じていた。その後、9月後半に入って、円安が急速に進み、同時に日本株も上がったのは、もはや、最後の売り場作りだった可能性がある。こうして、売りの大量発生となる環境が整ったのであった。
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