見通しが難しくなった、これからの株式市場 マーケットの何かが変わったのか?

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そこへ、予想以上の欧州経済停滞、米国の指標改善の遅れ、一方で、金利引き上げのタイミングは遅れず、ということが重なり、世界株式相場は一気に崩れた。つまり、このファンダメンタルズのニュースが衝撃だったのではなくて、売りたくてたまらない投資家が溢れているタイミングで、売り時だ、というきっかけが重なって生じたので、みんなが同時に売ることになったということだ。

だから、下落は一日に一気にくるのではなく、1週間以上たっても売りが続くという展開となった。売りエネルギー、しかも、仕掛けだけではなく、実需で利食い売りをしたい人々が多数たまっていたので、それらをはき出しきるには、時間が必要だったということだったのだ。

さて、そうなると、今後の株式市場の見通しは難しくなる。売りが出尽くしたと思えば、売る理由はもはやないし、ファンダメンタルズがそこまで悪いわけではないから、買いに転じる投資家が出てくると思われる。一方、ひと相場終わったという認識に投資家が落ち着けば、しばらくは様子見となるので、さらに下落しないと買い始める投資家はそれほど出てこないということになるだろう。

ひたすら下がるのを、待ち続けても意味がない

18日の土曜日には、一部報道で、GPIFの日本株への配分がそろそろ決定する、しかもその水準は20%よりは高い20%台半ばでは?というニュースが流れた。これをきっかけに相場が上げに転じるかどうかは、まさに、多くの投資家のセンチメント、気分が、もう買いに転じたいというものか、もっと下がらないと、と思っているか、どちらかで大きく分かれるだろう。

私の個人的な直感は、まだ買いに転じるわけでもない、ということだが、同時に、経済が特に悪いとも思っていないので、ひたすらさらに下がるのを待ち続けることも意味がないと思う。

したがって、金融市場のファンダメンタルズ、インフレや景気見通しは何も変わっていないから、変化は何もない、ということになるが、投資家の胃袋と脳みそ(センチメント)は、入れ替えが起きたので、全く違う世界になったということだ。そして、入れ替えが終わってしまえば、パニックが続く理由はないので、そこまで悲観的になる必要はない、というのが今の状況だと思う。
 

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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