東海地区の鬼嶋一司選考委員長は「賛否両論あり、拮抗していた。ただ、簡潔に言えば投打に大垣日大が勝ったということです。特に投手力で差があった。甲子園で勝てる可能性の高いチームを選んでいます」と選考理由をメディアに話した。準優勝した聖隷クリストファーよりも4強で敗退した大垣日大の方が「投打で勝った」という説明はかなり苦しい。
それに「甲子園で勝てる可能性の高いチーム」ということだが、一方で21世紀枠の選考基準は「勝敗にこだわらず多角的に出場校を選ぶセンバツ大会の特性を生かし、技能だけではなく高校野球の模範的な姿を実践している学校を選ぶ」となっている。一方で「勝てるチーム」を選びながら、もう一方で「勝敗にこだわらない」はダブルスタンダードではないか、という疑問が湧く。
ダルビッシュ有はTwitterで「それするならせめて聖隷クリストファー高を選考した上で特別枠で大垣日大高を選考するべきではないんですかね?」と言った。まさに正論だ。例年であればそうしたはずだが、他地区との兼ね合いでそれもできなかったのだろう。
スポーツ報知の記事によると、聖隷クリストファーの上村敏正監督は「高野連には抗議文などを出すつもりはない」と語った。無念ではあっただろうが、それを押し殺してセンバツの大義を尊重したわけで、これこそ「選抜されるにふさわしい態度」ではないかと思う。
誰もが納得できるような「選考基準」を
私学にとって「甲子園出場」は、知名度アップ、生徒募集など学校の経営に非常に大きな影響を与える。私学野球部に雇用される指導者の中には「何年以内に甲子園出場」を約束させられる人もいる。また選手にとっても甲子園に出場するかしないかで、大学や社会人など、その後の進路も変わってくる。決していいこととは思わないが、高校野球はここまで大きなビジネスが絡むようになってしまったのだ。
この出来事を契機として選考委員は誰もが納得できるような「選考基準」を明示すべきだろう。一番いいのは「前年の秋季大会の優勝、準優勝チームから優先的に選考する」という一文を追加して、実質的に前年の秋季大会を「予選」にしてしまうことではないか。
何事によらず、世の中はグレーゾーンをなかなか容認しなくなっている。春の甲子園も改革すべき時が来ていると言えよう。
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