「あの人は私に悪意がある」と考えすぎる人の盲点 感情的な論理で、ありもしない意図を見いだしがち
自分たちの目の前の現象について、私たちはそこに何らかの意図があると考えがちです。しかし、それはまったく意図的でない可能性のほうが高い。
とりわけ、好ましくない状況の原因を考えるとき、強い感情的な反応に伴って脳は機能不全を起こすことがわかっています。それを修正するツールとして、ハンロンのかみそりが有効です。この思考ツールを用いた結果、人類を滅亡の危機から救った史実からもその有用性がわかります。
「前提」と「周り」から離れる
1962年10月27日、ヴァシリ・アルヒポフというソ連の人物が、悪意の存在を前提としないことで世界を破滅の危機から救いました。
当時は核ミサイル配備をめぐるキューバ危機が頂点に達し、米ソ間の緊張が高まっていた時代。アメリカの駆逐艦とソ連の潜水艦はキューバ沖の海域で対立を続けていました。そしてついに、アメリカはソ連に対して演習用爆雷を投下してソ連潜水艦を強制的に浮上させると通告。
しかし、この情報はソ連軍司令部から潜水艦隊にうまく伝わらず、前線の潜水艦はアメリカの計画を知りませんでした。
アルヒポフはソ連潜水艦B-59の将校。B−59は核兵器を搭載しています。頭上で爆雷が炸裂し始めたとき、潜水艦内のソ連将兵は最悪の事態を想定しました。戦争が始まったと思ったB−59の艦長は、核弾頭を搭載した魚雷のスイッチに手を掛けます。
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