「あの人は私に悪意がある」と考えすぎる人の盲点 感情的な論理で、ありもしない意図を見いだしがち
しかし、核魚雷の発射には乗艦する3人の上級将校全員の同意が必要で、アルヒポフは発射に同意しませんでした。彼は敵に攻撃の意図があると考えず、浮上してソ連政府に連絡すべきだと冷静に主張したのです。
私たちが思うほど真の悪人は多くない
潜水艦の周りで起きる爆発は敵の攻撃かもしれませんでしたが、アルヒポフはそう考えて行動すれば数十億人の命を危険に晒すことになると認識していました。むしろ、相手の過ちや無知が原因だろうという前提で軍事行動に出ない決定を下すほうがはるかにいいと判断したのです。
40年後に当時の記録が機密解除され、世界がどれほど核戦争に近づいていたかが明らかになって、アルヒポフの決断が世界を窮地から救ったことが知れ渡りました。
「ハンロンのかみそり」という思考法が伝えようとしているのは、行動の背後に存在しうるすべての動機のうち、行動を起こすためのエネルギーが最も少なくてすむもの(無知や怠惰など)は、積極的な悪意を要する動機よりも発生する可能性が高いということです。
つまるところ、ハンロンのかみそりは私たちが思うほど真の悪人は多くないことを示しています。誰もが同じ人間である以上、すべての人間は間違いを犯し、ときには怠惰になり、間違った思考にはまり、浅い動機の元に行動を起こしてしまいます。
固定観念と思考過剰を避けるためにも、「私たちはつい感情的に論理を組み立ててしまう」こと、「ありもしない意図を見出してしまう」こと、そして「ハンロンのかみそり」を思い出してほしいと思います。
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