「あの人は私に悪意がある」と考えすぎる人の盲点 感情的な論理で、ありもしない意図を見いだしがち
なぜ私たちの脳は、理屈に反する関連づけをしてしまうのか?
心理学者のダニエル・カーネマンらの「リンダ問題」は、私たちの認知機能の問題点を示す優れた例です。
「リンダは31歳の独身女性。外交的な性格で非常に聡明だ。専攻は哲学だった。学生時代には差別や社会正義の問題に強い関心を持っていた。反核デモに参加したこともある」
②リンダは銀行の窓口係で、フェミニスト運動の活動家でもある
「飛躍した結論」が出やすい状況
回答者の大半は②を選びました。リンダの説明の表現は、彼女がフェミニストであることを示唆しています。そして選択肢は、銀行の窓口係か、フェミニストの銀行窓口係に限られている。したがって、回答者の大半は自然と彼女がフェミニストかつ窓口係だと結論づけました。統計学的には条件が1つのほうが、条件が複数あるよりも真実の可能性が高いにもかかわらずです。
言い換えれば、すべてのフェミニストの銀行窓口係は例外なく窓口係ですが、すべての銀行窓口係がフェミニストであるとは限りません。
こうしてカーネマンらは、私たちの認知機能にある種のエラーが存在することを明らかにしました。「合説の誤謬(ごびゅう)」と呼ばれる、一般的な状況より特殊な状況のほうを確からしいと判断するエラーです。人間はメッセージ性の強い情報が入ってくるとそれに大きく影響され、単純な論理にさえ反する判断を下してしまうのです。
私たちは入手可能な情報に基づいて飛躍した結論を出し、自分がすでに信じていることに近ければ、無関係な情報もひとまとめに関連づけてしまいます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら