アメリカの高校生が学校で学ぶ「金融市場」の基本 日本でも始まる金融教育、その先例を学ぶ

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アメリカでは、子供時代から金融教育を進めている(写真:Halfpoint/PIXTA)
2022年度からスタートする新学習指導要領では、資産形成教育の一環として「投資信託」の授業が高校の「家庭科」で導入される。金融教育後進国であった日本にとっては、大きな一歩であるが、日本よりも先行して子供時代から金融教育を進めている先進国が、アメリカだ。
どのような授業が行われているのか、一例をお伝えするために『アメリカの高校生が学んでいる経済の教室』から、金融市場についての解説を抜粋する。

債券市場とは何か

長期の資金調達が必要な場合、政府と会社は「債券市場」からお金を借りることができる。投資家が債券を購入するのは、債券を発行した政府や会社にお金を貸すのと同じことだ。そのため債券の購入者は、元本に利子をつけて期日までに返済してもらうことを期待する。

債券市場の利点は、債券の発行者にとっては多額のお金を借りられること、そして債券の購入者にとっては比較的安全な投資で利子を稼げることだ。

市場が円滑に機能する条件として、セカンダリー市場の存在が挙げられる。ニュースなどでよく耳にする株式市場や債券市場はセカンダリー市場だ。セカンダリー市場とは中古市場のことで、買い手も売り手も中古の財とサービスを取引している。中古市場で高く売れるという期待があれば、多くの人が新品を買いたいと思うだろう。株や債券もそれと同じだ。発行されたばかりの株や債券を買った人が、セカンダリー市場で売って利益を上げることができなければ、市場は円滑に機能できない。

債券の種類でよく知られているのは「利付債」と「割引債」だ。利付債は額面に近い価格で売られ、決まった額の利子が保証されている。割引債は額面より安く売られ、満期が来たら額面通り返済される。どちらの債券も、元本を減らさずに利子を稼ぎたい投資家にとっては魅力的な商品だ。セカンダリー市場で債券を売ることもできるので、ある程度の流動性も担保されている。これも投資家にとっては重要な点だ。

債券は誰が発行するかによって呼び方が変わる。発行者が政府なら「国債」、地方自治体なら「地方債」、民間の会社なら「社債」だ。会社は「社債」を発行することで資金を調達できる。会社にとって社債の利点は、銀行から借金をせずに設備投資を行えることだ。それに社債は借金なので、株式の発行と違って会社の所有権を譲りわたす必要もない。

しかし、社債のもっとも大きな利点はレバレッジを効かせられることだろう。レバレッジは「てこ」という意味で、レバレッジを効かせるとは、借金で投資の元手を増やして巨額のリターンを狙うことを意味する。てこの原理で、小さな力で大きなものを動かすようなイメージだ。

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