アメリカの高校生が学校で学ぶ「金融市場」の基本 日本でも始まる金融教育、その先例を学ぶ

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たとえば、ある会社に1000ドル(約11万5000円)の資金があり、それを設備投資に回すとしよう。その投資で10%のリターンが期待できるなら、100ドル(約1万1500円)の利益が出ることになる。しかし、借金で100万ドル(約1億1500万円)を調達し、それを10%のリターンが期待できる設備投資に回したら、会社は自分の資金をリスクにさらすことなく10万ドル(約1150万円)の利益を上げることができる。

民間の会社は国や自治体とは違い、債券の返済資金を税金で調達することはできないので、社債は国債や地方債よりもリスクが高いとみなされる。そのため投資家はより高い金利を要求する。

債券4大リスク――投資、インフレ、金利、早期償還

債券にもリスクはある。具体的には、「投資リスク」、「インフレリスク」、「金利リスク」、「早期償還リスク」だ。

投資リスクとは、債券を発行した政府や企業が借金を返せなくなることだ。また、債券の満期前にインフレになったら、たとえ利子を稼げても、インフレでお金の価値が下がった分で相殺されてしまう。これがインフレリスクだ。

債券の満期前に金利が上がったら、債券の実質金利が新金利と同じになるまで債券の価値は下がることになる(債券の金利が変わらなければ、より高い新金利と比べて債券の魅力がなくなるため)。投資家がこの債券を満期前に市場で売ろうとしたら、元本割れになってしまうかもしれない。これが金利リスクだ。

逆に満期までに金利が下がったら、債券の発行者は今ある債券を早期に償還し(満期よりも前に借金を全額返済すること)、新しい低い金利でまた債券を発行したほうが得になる。その場合、古い債券を持っている人は、満期まで持っていたら稼げたはずの利子を失うことになる。これが早期償還リスクだ。

投資家が債券を購入するときは格付けを頼りにすることが多い。主な格付け機関は、ムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ、フィッチなどだ。最高の格付けは「プライム」で、その下に「投資適格」や「ジャンク」があり、そして借金が返せなくなった状態が最低の「デフォルト(債務不履行)」だ。債券の格付けが下がると、そのリスクを補うためにより高い金利が求められる。

格付け機関は有益なサービスを提供する存在であり、投資判断をするうえで彼らの情報は欠かせない。しかし、投資家は格付け機関だけを頼りにしてはいけない。かつて2008年の金融危機では、格付け機関の深刻な問題が浮き彫りになった。怪しい債券にも最高ランクを乱発し、それが危機の到来とともにあっという間に格下げされたのだ。

金利は5つの要素でできている

金利は複数の要素で構成されている。「実質金利」、「期待インフレ・プレミアム」、「デフォルト・リスク・プレミアム」、「流動性プレミアム」、そして「満期リスク」だ。

実質金利と期待インフレ・プレミアムで決まるのは「無リスク金利」だ。この無リスク金利を基準に他のすべての金利が決まる。目下のところ、アメリカ財務省が発行するさまざまな債券の金利が無リスク金利の役割を果たしている。

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