アメリカの高校生が学校で学ぶ「金融市場」の基本 日本でも始まる金融教育、その先例を学ぶ

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財務省証券(アメリカ国債)がこの役割を果たせるのは、220年以上の歴史で一度も債務不履行の状態になったことがないからだ。それに国債はアメリカ政府の完全な保証があるために、セカンダリー市場での売買もまったく問題なく行える。

国債のセカンダリー市場はとてつもなく重要な存在だ。多くの外国政府、銀行、ビジネス、個人が、無リスクの投資先としてアメリカ国債を求めているために、国債の流動性は完全に担保される必要がある。

国債の保有者にとって、唯一のリスクは満期リスクだ。満期までの期間が長くなるほど、購入時の金利から変化する可能性も高くなる。満期前に金利が上がることが予想されるなら、国債の価値は下がることになる。新規の国債価格が下がると、国債の実効金利は上昇する。その結果、以前に発行された国債は魅力がなくなり、セカンダリー市場での価格が下がることになる。

株式市場はどんなところか

あらゆる金融市場の中で、もっともメディアの注目を集めるのが「株式市場」だ。債券市場は投資家が政府や企業にお金を貸す場所だが、株式市場は、投資家が「株式」を購入するという形で企業の所有権の一部を手に入れることができる場所だ。

設備投資の資金が必要になった企業は、新しく株式を公開発行して資金を調達することができる。これを「新規株式公開(IPO)」と呼ぶ。投資家が株を買うのは、「配当」をもらって利益を上げるためか、あるいは売却して利益を上げるためだ。

配当とは、会社が利益の一部を株主に配るお金のことだ。株主は持っている株数に応じて配当を受け取ることができる。たとえば、ある会社が株を100株発行し、事業で100万ドル(約1億1500万円)の利益を上げたとしよう。その利益の半分を配当に回すなら、投資家は1株当たり5000ドル(約57万5000円)の配当を受け取ることになる(50万ドル〈約1億7250万円〉を100で割る)。

また株は、買った値段よりも高値で売却して利益を上げることもできる。株の売却益は「キャピタル・ゲイン」と呼ばれる。一方、配当による利益は「インカム・ゲイン」と呼ばれる。

株の売買のほとんどはセカンダリー市場で行われる。株の買い注文を出して手に入るのは、おそらく以前に他の誰かが持っていた株だ。たとえば、ティナが株式市場でコカ・コーラ社の株を買う場合、彼女に株を売るのはコカ・コーラ社ではなく、その株を持っていた別の投資家だ。

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そしてコカ・コーラ株を2株買うのに150ドル(約1万7000円)払ったのなら、150ドルを受け取るのはその別の投資家であり、コカ・コーラ社に入るお金はゼロだ。株の購入で会社にお金が入るのは、IPOのときか、あるいは会社が持っている自社株を売るときだけだ。

会社が発行する株には、「普通株」と「優先株」の2種類がある。普通株の購入者は、会社の所有権の一部と、会社の経営に関する議決で票を投じる権利(議決権)を手に入れることができる。優先株の購入者も会社の所有権の一部は手に入るが、議決権は認められていない。この株が優先株と呼ばれるのは、普通株の所有者よりも優先して配当を受けられるからだ。

普通株を発行するか、それとも優先株を発行するかの決断は、それぞれの欠点を考慮して行われる。普通株は株主に議決権を認めることになるので、会社の創業者であっても、新規の株主が多数派になれば投票によって解任されてしまうかもしれない。そして優先株は株主に配当を出すことを保証しているために、利益を会社の成長のために再投資したいのであれば、その約束が足かせになるかもしれない。

デーヴィッド・A・メイヤー
David・A・Meyer

テキサス州サンアントニオのウィンストン・チャーチル高校でAP経済学を教える(APは「Advanced Placement」の略語。高校生に大学初級レベルの内容を教えるプログラムのこと)。サンアントニオ学区の経済学教育カリキュラムと高校AP経済学プログラムを作成。APプログラムや大学入学共通テストのSATを運営する非営利団体カレッジボードでコンサルタントを務め、APマクロ経済学試験の評価と、未来のAP経済学教師の育成を行っている。テキサス州サンアントニオ在住。

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