健康は「腸内環境が決める」と医師が断言する訳 腸内細菌の多様性が低くなる4つの要因とは?

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クローン病などの炎症性腸疾患、下痢型の過敏性腸症候群、大腸がんなどの腸管の疾患では常に腸内細菌の多様性は失われている。肥満の人は、腸内細菌の多様性が20%も失われている。

腸内細菌の多様性を高く維持するためには多様な食事を心がける。食物繊維やオリゴ糖を多く含む食材は善玉菌の好物で、ニンニク、タマネギ、アスパラガス、豆類、ブロッコリー、カリフラワー、アボカド、バナナなど、プレバイオティクスと呼ばれる。

色とりどりな野菜果物の色素に含まれるポリフェノールやカロテノイドなども善玉菌が喜ぶ成分。日本人が昔から食べてきた味噌や納豆、醤油、麹などの発酵食品には日本人の腸にとって必要な腸内菌が含まれている。

腸内環境に悪影響を与える4つの外的要因

食事以外に腸内環境に影響を与える要因は、①抗生物質②果糖ブドウ糖液糖③運動不足④睡眠の乱れである。

一般に抗生物質を連続投与すると4日目には善玉菌が低下し、相対的に悪玉菌の割合が高くなる。現在では、抗生物質の投与後に微生物叢が正常に戻るどころか、完全には回復しない可能性があることがわかっている。

果糖ブドウ糖液糖は砂糖よりも甘みが強く、広く市販の商品に使用されている甘味料だ。現代ではソーダなどの清涼飲料水はもちろんのこと、栄養ドリンクや焼き肉のたれ、ドレッシングのような調味料にも広く使われている。

高濃度の果糖は様々な健康被害をもたらす。脂肪細胞に直接働きかけ、脂肪の蓄積、肥満、心臓病のリスクを増大させる。そしてこのような健康被害を起こしているということは、当然腸内細菌の乱れも引き起こす。

また、運動によって腸内の善玉菌の割合が増え、腸内細菌の多様性(種類)が増大するということが最近の研究でわかってきた。習慣的に運動を行っている人は運動を行っていない人と比べて明らかに腸内細菌の多様性が高いことも報告されている。腸内環境を改善しようとして食事だけいくら改善しても、(善玉菌のサプリメントも含めて)運動を取り入れていなければ十分な改善効果が得られないことがわかる。

さらに、睡眠の乱れと腸内細菌の組成の間には明確な関連がある。26名の男性の睡眠データと血液、糞便内の腸内細菌の関連調査を行ったところ、腸内細菌の多様性が高い人ほど睡眠の質が高いことが示された。多様性が低い人は長く眠ることができない。

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