健康は「腸内環境が決める」と医師が断言する訳 腸内細菌の多様性が低くなる4つの要因とは?

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腸内に入ってきたものが体にとって必要なものかどうかの選別の作業は、腸内細菌も免疫の細胞との共同作業で行っている。免疫細胞は異物を発見すると攻撃を仕掛ける。

病原菌、病的ウイルスの侵入など免疫をしっかりと働かせなくてはいけないときには、常在菌が免疫を誘発する。リンパ球を増殖させ、腸管内の抗体を誘導して外敵を駆逐する。

免疫力が強い人、感染しにくい人とは? 

体に侵入してきた病原体や、異常になった自分の細胞(がん細胞や感染した細胞など)を感知排除するシステム、いわゆる免疫力が強い人とはこの自然免疫が強いことを意味する。自然免疫にも敵を記憶しておくシステムがあり、一度感染したウイルスや細菌が再度侵入した際にはすぐに敵を排除することができる。

腸内は腸の細胞が分泌する粘液で覆われ、常在菌が一定数存在することで、悪玉菌の増殖を抑える。粘液の中には抗体(分泌型IgA)と、抗菌物質(AMP)が存在し外敵の侵入を防ぐ。抗体は腸管内の毒素も吸着して、毒素を便とともに体の外に出す。この抗体を作る働きのためにも重要なのは、腸内細菌のつくる短鎖脂肪酸だ。

腸で作られた免疫情報は全身の免疫に影響を与える。かぜは、ウイルスや細菌などが、気道の粘膜に付着・侵入し増殖することによって発症する。上気道(鼻・咽頭・喉頭)や下気道(気管、気管支、肺)が感染した状態をかぜ(感冒)と呼んでいる。気道には腸と同じく粘液があり、その中には感染を予防するための抗体が存在している。気道で抗体がしっかり働くためには、腸内細菌の作る短鎖脂肪酸が必要だ。かぜを引かない、感染して気管支炎や肺炎にならないために、腸内環境を整えることがいかに重要かがわかる。

腸内細菌が作る短鎖脂肪酸は、腸内環境にも免疫力にもメンタルの状態にも重要だが、この短鎖脂肪酸が腸内で吸収されにくく排出されてしまう人ほど、腸内細菌の多様性が乏しく、全身の炎症反応が高くなる。また、腸内細菌内の悪玉菌の比率が高く、肥満や心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中など)の危険因子を多く持つ。

偏った食事をすると偏った腸内細菌が増える。アメリカ、イギリス、オーストラリアなど1万人以上の便の研究からわかったことは、1週間に30種類以上の野菜果物を食べる人は腸内細菌の多様性が高く、抗生物質耐性菌などのいわゆる悪玉菌が少ないということ。良い腸内環境とは、多種類の腸内細菌が存在している「腸内細菌の多様性が高い」状態なのだ。

次ページ肥満の人は「腸内細菌の多様性」に乏しい
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