社会人大学院で「地獄」を見た教授の学び直し論 あえて「無目的に学ぶ」勇気がキャリアを育てる

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ーー博士号を取ったら、ファンドマネジャーの仕事は辞めようと思ってたんですか?

山田:「もし機会があったらいつでも移れるように」と考えつつ、勉強に重点を置きながら仕事をしていました。当時、大学では実務家教員に非常にニーズがあった頃だったんです。

ただ、実際によく聞いてみると、そういう教員に対して、「ビジネスでの自慢話だけを学生に一方的に話して終わる」などの悪い評判もあったんですよ。

実際、それだと学生のためにもなりません。実務経験を生かすためにも、アカデミックなバックボーンが必要だと考えていました。両方兼ね備えてたほうがいいのは間違いないですしね。その辺は、結構モチベーションになっていました。

ーー博士課程の後はどういう経緯で今に至るのでしょう。

山田:大学の公募に応募しながら仕事をしていました。でも、もう何大学も落ちるんですよ。博士号を取得したとはいえ、研究業績が少ないからです。

そして、中央大学で、非常勤講師として教え始めました。そこは実務家を先生として呼ぶというコースがあって、ここもきっかけは紹介。

ーー人との縁があったんですね。

山田:専任の教授ではなかったものの、10年ほど関わることになり、結果的に教えることに関してもキャリアも積んで、2013年に教授になることができました。46歳のことでした。

ーー期せずして、僕がTBSを退社した年齢です。46歳ってそういう年なんですね。

山田:そうかもしれませんね。

会社員時代に培った「プレゼン力」が活きる

ーーそうして教授となったわけですが、会社員時代の経験は今の仕事に活きていますか?

山田:そうですね。例えば、プレゼンの能力。ファンドマネジャー時代、多い時は週の半分くらい、日本全国いろんな販売会社の支店にプレゼンに行っていたんです。700人ぐらい入る会場で話すこともあったので、そういう経験は今にも活きていますね。

ーー違う職業でも、役に立つ能力ですもんね。

山田:教育って非常に属人性が強いと思うんです。例えばシラバスでは15回分を全部書かないといけないのですが、仮にふたりの教授が同じシラバスの授業を行ったとしても、学生の受ける印象は絶対違うはず。

しかし、周りの大学教員たちは、意外とそういうことをわかってないんですよね。

ーー会社員を経由したからこその話だと思いました。もし、小学生の時の夢をストレートにかなえて先生になっていれば、そういうプレゼンの感覚を持って授業はできていなかったのでは。

山田:そうですね。だから僕としては、最初からそれを目指すよりも、まったくべつの形から入ったほうが幅が広がると思うんです。キャリアにおいて、遠回りは全然悪くないと思いますし、むしろよいことだと思います。

ファイナンスも、無駄なところや非効率的なところにこそ、儲けのチャンスがあるんですよね。人間って無駄とか非効率から目を逸らしがちですけど、でもそこを探して目を向けて、解消する過程で利益を生み出すことができる。

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