親から反対も19歳で「湯灌師」目指した彼女の決意 産育休を機に一度辞めたものの再び就いた理由
葬儀には、葬儀社だけではなく、さまざまな専門業者がかかわっている。亡くなった方のお身体を洗い清める湯灌(ゆかん)・死化粧・納棺などもそうだ。葬儀社が行うこともあるが、専門業者に外注しているところも多い。
湯灌・死化粧・納棺は、遺族の目の前で遺体に直接触れるため、技術や接遇が未熟であれば故人と遺族との最期の別れを台無しにしかねないとても大変な仕事である。それでも、仕事にやりがいを感じてプロとなり、誇りを持って働き続けている人は少なくない。彼らはいったい何に魅力を感じてこの仕事を選び、プロとして働き続けているのか――。
湯灌・死化粧などを行うケアサービス(東京都大田区)のエンゼルケアサービス部門のインストラクター、小幡晃子さんに話を聞いた。
19歳の彼女の選択に両親は反対
ケアサービスでは、湯灌・死化粧・納棺をエンゼルケアサービスと呼び、業界大手で多数のスタッフが在籍している。その中で、サービス品質向上を図るインストラクターが数名おり、小幡さんはそのうちの1人、プロ中のプロである。だが、初めからプロを目指していたわけではなかった。
小幡さんは、2002年に高校を卒業後、家業(餅菓子製造・小売業)の手伝いを行っていた。顧客は高齢者が多く、「お年寄りと接するのが好きだった」ことから、介護職に就こうとしたが、経済的に学校に行くことが難しかった。
そんな時、ケアサービスの「亡くなった方の最後のお手伝い」という求人広告が目に止まり興味を持った。両親に、「この仕事をしてみたい」と話したところ、まだ若いことや、仕事に良いイメージを持たれず反対された。だが、一緒に住んでいた祖母が「亡くなった方の最後のお手伝いをするなんて、素晴らしい仕事じゃない」と背中を押してくれ、採用面接を受けることにした。
面接を行った後、入社を希望する人は、実際の湯灌・死化粧・納棺を見学し、本人が最終判断することになっていた。小幡さんも、見学に臨んだが、「すごくショックを受けた」という。見学したのは、火事で焼死した故人だったからだ。
「全身がススで真黒になっておりすごくショックでした。この仕事は、私にはできないかもしれないと思いました。でも、スタッフがお手当(遺体処置)をしていくうちに、見違えるように変わっていったのです。
人の手によりこんなにもきれいな姿に戻せることをすごい仕事だと思い、とても感動しました。お手当を始めてから納棺まで3時間ほどかかったのですが、その間に、私の気持ちは、この仕事をやってみたいへと変わっていました」
小幡さんは2003年にケアサービスに入社した。高校卒業してから約1年半後である。
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