親から反対も19歳で「湯灌師」目指した彼女の決意 産育休を機に一度辞めたものの再び就いた理由

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ほかのスタッフとの違いはどこにあるのだろうか。小幡さんに質問すると、まず、仕事が丁寧であることではないかという。

「例えば、お身体のお手当をする時に、まずお鼻とお口に綿を詰めるのですが、詰めることに意識がいき、丁寧さを見落としてしまいがちです。それだと、見ている方が痛々しく感じてしまうこともありますし、故人様の尊厳を守ることもできません。それを丁寧に行うことで、ご遺族様からお手当を見てみたいと言われた時でも、安心していただけます」

また、技術力の違いもあるのだろうという。

「例えば、入院期間が長くて、頬が痩せてしまい生前の人相と変わってしまっている方もいらっしゃいます。その時に、身体や目元も痩せているのに、顔だけを見て、綿で頬をただふくらませようとしてしまう人がいます。私は、お顔だけでなく、生前はどのくらいふっくらされていたのだろうと考え、全身を見て判断します」

小幡さんの技術力の高さは、「亡くなった方を見た時に、手当にかかる時間を瞬時に計算できます」との言葉からもわかる。時間を意識し的確な手当をすることは、ビジネスパートナーからの信頼を得ることができ、ご遺族にも安心感を与えるという。

美容部員からも知識を吸収

こうした仕事の丁寧さや技術力、時間の見立て力は、どのように身に付けてきたのかを小幡さんに尋ねると、2つ挙げる。1つは、先輩の技術を見て学び覚えたことだ。

「手に職をつけるには、先輩の技術を間近で見て学ぶことが一番の近道です。自分が所属する事業所だけでなく、ほかの事業所にもヘルプに行き、いろいろな先輩と組み、良いと思う技術はどんどん自分のものとしていきました」

もう1つは、自分でも独自に勉強したことだ。

「例えば、化粧の仕方については、美容部員の方からメイクアップのアドバイスや筆の持ち方など専門的な知識を学びました。湯灌で行う洗髪については、自分の子どもの洗髪をして、どこら辺がかゆくなるのか、どこら辺をマッサージすると気持ちが良くなるのかなどを試すなどの勉強をしました」

2019年にトレーナーになった小幡さんは、2年後の2021年には、インストラクターとなった。インストラクターは、ケアサービスが湯灌・死化粧・納棺の品質向上を目指し、社員を教育するために新たに設けた職位だ。インストラクター候補数十名の中から、2年間にわたるインストラクター候補生活動と、2021年4月から行われた選考試験を経て、インストラクターの1人に選ばれた。

仕事のやりがいについて、小幡さんは、「初めはつらそうな表情をされていた故人様が、私たちの技術によって、きれいに、穏やかな表情に変わったと感じられた時にやりがいを感じます。

また、ご遺族様から、『あんなに苦しそうな顔をしていたのにこんなにも綺麗に丁寧にしてくれて、お願いして良かった』などとお言葉をいただいた時です。それは、ご遺族様に喜んでいただけただけではなく、人としての故人様の尊厳を保つことができたという意味を含めてのやりがいです」と話す。

小幡晃子さん(写真:ケアサービス)

最後に、今後の抱負について尋ねると、次のように語った。

「私が入社した頃に比べ、20代の若いスタッフが多くなっています。人が人を見送るという仕事の重みや素晴らしさを若い人たちにもきちんと伝え、この仕事に携わりたいという人がもっと増えるようにしていきたいです。

また、最近では、新型コロナウイルスの影響が続き、世の中の動きも変化しました。闘病中でも家族は面会制限をされることが多く、やっと会えた姿が永遠のお別れとなることもあります。

1分1秒でも傍に居たい、抱きしめたい、触れていたい。そのようなご家族の思いを感じ汲み取り、納棺のお手伝いに携わることが大切だと感じます。ご家族にとっては、一度限りの納棺式です。ご満足いただけるように、技術はもちろんのこと、より一層、人間性を磨いていきます」

「この仕事が天職だと思っています」という小幡さんは、まだ37歳と若い。今後も、この仕事にやりがいと誇りを持って働き、ますます活躍していくのだろう。

塚本 優 終活・葬送ジャーナリスト

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つかもと まさる / Masaru Tsukamoto

北海道出身。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、大手終活関連事業会社の鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務める。2013年フリーライターとして独立。ライフエンディングステージの中で「介護・医療」と「葬儀・供養」分野を中心に取材・執筆している。ポータルサイト「シニアガイド」に「終活探訪記」を連載中。「週刊高齢者住宅新聞」などに定期寄稿。

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