御嶽山への自衛隊派遣、口を挟むとサヨク? 必要なのは事実に基づく冷静な議論

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陸自のUH-60JA(筆者撮影)

ヘリコプターで一気に山頂まで行けばいい、と考える読者も多いだろう。実際、ヘリコプターが多用された。だが、今回のような標高3000メートルクラスの山では、空気が薄く、極めて運用が難しい。着陸するにしても降り積もった火山灰がホバリングのダウンウォッシュで舞い上がって視界を遮る「ブラウンアウト」と呼ばれる状態が起こる可能性もある。

アフガンの戦闘ではこの「ブラウンアウト」で多くの事故が起きたため、数々の対策が施されている。また、英国やフランスなど諸外国では戦闘救難ヘリや特殊部隊用のヘリ部隊を統合して運用するシステムが確立している。彼らのヘリは一般のヘリより優れた装備をもち、夜間や山間部などの極めて危険な環境での訓練を行っている。

だが自衛隊には、ブラウンアウト対策を施したヘリも、特殊部隊専用ヘリ部隊を運用する構想もない。今回投入された自衛隊のヘリパイロットは極めて優秀だと思うが、そのような装備も訓練もなされていないため、まさに決死の覚悟での飛行だっただろう。彼らは「できません」とは言わないだろうが、通常の汎用ヘリ部隊にこのような救難活動を行わせるのは極めてリスキーで、墜落による二次災害が起こる可能性もあった。

無人ヘリを活用するべき

筆者は自衛隊のヘリ部隊にも友人や知己が少なくないし、彼らのプロフェッショナリズムを尊敬している者だ。しかし、不十分な装備と運用で彼らに危険な任務を押し付け、ヒーロー的な活躍を期待するのは無責任である。

むしろ、問題なのは、災害に威力を発揮するとの謳い文句で導入された陸自の無人ヘリ、FFRS(長距離偵察システム)が使用されなかったことだ。今回のようなケースでは、ヘリのエンジンが火山灰を吸い込み、トラブルを起こして墜落する事態も考えられた。まずは無人ヘリで現場の状況を偵察できれば、被災者の数や状態などをより安全に把握でき、救出計画に役立つ情報収集も可能だっただろう。

筆者はこの件を9月30日に行われた防衛相定例記者会見で、江渡聡徳防衛相に質した。江渡防衛相は「噴石から何からかなり飛んでいるような状況の中において、はたしてそれを活用することが有効になったかどうかという、そういういろいろな観点から」考慮した結果、使用されなかったと答えた。江渡防衛相は、御嶽山噴火に際する災害派遣では、二次災害の発生を抑える最大の努力を払ったとしているが、そのような状況下であればこそ、FFRSは投入されてしかるべきであったろう。

FFRSは自然災害などやNBC(核・生物・化学兵器)環境下において、人命を危険に晒すこと無く偵察や状況把握を行うために開発、装備された。だがFFRSとその原型となったFFOSは先の東日本大震災でも一度も使用されることがなかった。そして今回も使用されなかった。2013年4月25日に開催された衆議院予算委員会第一分科会で、徳地秀士防衛政策局長(当時)は、その理由を信頼性が充分ではなく、配備後まだ時間が充分の経過しておらず、二次被害が起きる可能性をあった、と答弁している。だが、今回の噴火はFFRSが導入されて以来、4年以上が経過しているわけであり、充分な飛行実績がないとは考えられない。

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