「日米の情報一体化が抑止力向上に繋がる」

マイケル・グリーン氏に聞く日本の安全保障

――安倍首相が進めた日本の集団的自衛権の行使容認について伺いたい。そもそも日本は、長い時間をかけてその方向に向かっていたと思うが。

そのとおり。日本の安全保障政策は“漸進主義”で、急変もなければ驚きもないものだ。その歴史は1954年の自衛隊創設にさかのぼる。米国は日本がより大きな役割を担うのを支援してきた。重要な変化が起きたのは宮沢喜一元首相が集団的自衛権の行使を支持した2001年だ。

宮沢氏は憲法9条を厳格に守る吉田ドクトリンの継承者だ。自衛は狭く定義され、日本が明らかに攻撃されない限り、紛争に関わることは許されなかった。しかし、宮沢氏は国際環境が変化したと言い、そもそも吉田元首相の意図は憲法9条の禁止条項が永久ではないと言明した。憲法問題に柔軟に対処しないと、憲法そのものを改正せざるを得なくなるという心配があったのだろう。

宮沢氏のコメントは冷戦後の安全保障環境が変化したという現実を認識し、同時に憲法9条の精神を保持することを目的としたものだ。歴史家はおそらく宮沢氏のコメントを転換点とみなすだろう。

民主党政権時代にも漸進した

マイケル・グリーン(Michael Jonathan Green)●戦略国際問題研究所(CSIS)アジア日本会議上級副議長、ジョージタウン大学エドモンド・ウォルシュ・フォリン・サービス校准教授。2001~2005年には国家安全保障会議(NSC)スタッフを務めた(写真はCSISのホームページより)。

――なぜ、そこが転換点と言えるのか。

宮沢氏が自民党内の反主流派ではないし、保守的リアリストでもないという点が重要だ。安倍首相は、祖父の岸信介元首相の足跡に従う保守的リアリストであり、彼の行動はある意味では当然。宮沢氏は自身を吉田ラインの守護者と見ていたが、その宮沢氏でさえ安全保障環境の変化に対応しようとしていた点が重要だ。したがって、2001年の集団的自衛権行使に対する支持は非常に重要になる。

漸進的変化はほかにもある。私が注目している変化は自衛隊が海賊対策を展開しているアラビア海での任務ルールだ。海上自衛隊は他国の盟友船防衛に武力の使用を許されている。憲法の立場では海賊は国家管理ではないから自衛隊の“外”にある。

しかし、民主党の菅直人政権下で政府は北朝鮮対策で共同防衛タスクフォースを立ち上げた。そのタスクフォースはミサイルが日本に向かっているとされた際に権限を委ねられた士官の指揮下にある。それは自衛隊による自衛権行使の定義拡大であり、重要なステップだった。

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