「日米の情報一体化が抑止力向上に繋がる」 マイケル・グリーン氏に聞く日本の安全保障

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日本が米国とリスクをいっそう共有する方向に進んでいることは間違いない。尖閣諸島や北朝鮮をめぐって日本のリスクは高まっている。日米の軍事力の結合関係が現実でないとしたら、リスクに対応することはできない。それは平和主義を貫いてきた日本の戦後史に反する話だ。

もっと一般大衆に分かりやすい説明を

――公明党は自民党の“歴史修正主義者”に対してチェック・アンド・バランスの役割を果たしたのだろうか。

公明党がチェック機能を果たしたことは間違いない。武器輸出3原則の緩和について公明党は、閣議決定の中に報告義務や透明性の尺度など特別な言葉を入れるように主張した。それは民主主義にふさわしい公共政策であり、正しい国家安全保障政策だと思う。

ただ、公明党は疑問符や懐疑を提示したが、積極な代替政策を提案してはいない。安倍首相の政策課題に挑んでもいない。安倍首相や自民党に新たなアプローチの範囲を狭めさせ、再定義させているだけだ。

――安倍首相の政治的手腕をどう評価するか。

安倍首相は政策変更をうまく説明できていない。彼は一般の国民に説明するためには、簡単なキャッチフレーズが必要になる。ケーススタディを強調し過ぎるのではなく、小泉元首相を見習って、一般大衆受けする説明を心がけるべきだ。

――たとえば、どのような説明をすべきか。

小泉首相であれば、こう言うだろう。「同盟国にそばにいてもらいたいと思うのなら、日本も同盟国のそばにいる必要がある」と。政策の本質を説明するには単純なフレーズが欠かせない。長ったらしいルールの説明を避け、新しい政策の本質的な目的について語るべきだ。

安倍首相や補佐官たちは、その政策が明らかに必要不可欠、かつ長年の懸案だと知っているだけに、一般大衆に十分に説明するという注意をあまり払ってこなかった。しかし、新しい政策の目的を哲学的、包括的に説明する必要がある。安倍首相はその説明をあまりにも官僚に依存し過ぎている。安倍首相はスポークスマンとしても優れた政治家になる必要がある。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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