――集団的自衛権行使容認の閣議決定について歴史家や政治学者は大きな進展と見ている。軍事専門家のプリズムを通して見るとどうか。とくに朝鮮半島有事の場合、この政策変更はどのような重要性を持つか。
人によってそれぞれ違う視点があるだろうが、私の視点はこうだ。日本には朝鮮戦争時に国連施設として設置された7つの基地がある。それらは米軍が使用できる基地でもある。ただし、その7つの基地だけでは米軍の主戦力を朝鮮半島向けに展開することはできない。7つの基地のうち空軍基地は3つに過ぎないためだ。つまり、米軍は他の基地や施設を利用しなければ、有事の活動ができない。
しかし、実際に(日本国内の)他の施設を使用できるのかどうか、不安がある。その解消のためには他の形で日米協定を結んでおけばいい。これは、それほど難しいことではない。ところが、それらの協定は「あくまでも集団的自衛権の問題に深入りしない」という条件になっている。
実際の危機が起こった時、日本の国会では反対派が「米軍が第三国に軍隊を派遣する際に他の基地や施設を使うことは憲法違反だ、撤退しろ」と言い出すのではないかと心配する向きが多い。
日米関係は表面的にはすべてうまくいっており、日本は米国の軍事作戦を支持している。しかし、最近、閣議決定した集団的自衛権行使容認が法制化されない限り、米軍が実際に動くと深刻なリスクを生じることになる。これは今も変わっていない。
――北朝鮮が休戦協定を破った場合、日米安保条約の事前協議は免除されるという秘密協定があるといわれる。その免除は7つの米軍基地だけに適用されると聞くが、それでは不十分ということか。
そうだ。7つの米軍基地のうち、空軍基地は横田、嘉手納、普天間だけであり、その他の基地は空軍が自動的に利用することができないものだ。いまでも他の空軍施設を数多く使っているにもかかわらず、だ。朝鮮半島に大量の軍隊を運ぶには空軍施設はもっと必要になる。
ただ、集団的自衛権行使容認によって朝鮮半島有事の際に必要な基地、施設の利用が可能になったことを、米軍の専門家は確認しているようだ。
自衛隊の活動はかなり広がる
――自衛隊の役割、使命にはどう影響するか。
対北朝鮮という文脈で考えると、自衛隊の活動はかなり広がる。米海軍は北朝鮮の潜水艦や他の艦船の動きを封じるためのサポートができる。集団的自衛権の行使が許されない場合、自衛隊は参加することが難しかった。
もちろんミサイル防衛の問題を忘れてはいけない。北朝鮮から米国に向けて発射されたミサイルを撃ち落とす最善の方法は、発射段階で仕留めることだ。そうするにはかなり北朝鮮の至近距離に展開しておく必要がある。問題はミサイルが日本に向かっていないと想定されたときに、それでも日本が撃ち落とすかどうかだ。
集団的自衛権行使が容認されれば、どんなミサイルであっても、おおよそ日本の方向であれば撃ち落とす権限が与えられる。
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