日本の有事で想定すべきは、7割が北朝鮮だ 有事には米軍人軍属30万~40万が朝鮮半島へ

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――閣議決定文書は憲法9条の精神を守るということにより、バランスをとっている。その表現は曖昧で、自衛隊はかなり幅広い使命を担える。実際的な意味で、今回の政策変更で北朝鮮はどんな影響を受けるのか。

複数の人の話を総合すると、集団的自衛権の行使容認は北朝鮮に対して効果的だとする見方が多い。米国はこれまで、日本がやりたいと思っている以上のことをやってもらいたい、と考えてきた。ペルシャ湾岸地域、その他の地域でのオイルラインや通信の扱いなどいろいろあったが、結局、日本はやりたがらなかった。

しかし、これからの日本は主要な大国としてサポート役を果たす準備ができているのかもしれない。私が話をした人たちは日本がそういう準備をしていることを喜んでいる。

北朝鮮7割、その他3割

――準備というと優先順位は、北朝鮮ということか。

そう思う。より広域な想定も重要だが、北朝鮮7割、その他3割といった割合だろう。

――朝鮮半島有事の際に想定される日本での米軍増強は?

イラク自由作戦では米地上軍は約17万人投入された。その他の軍事サービスを含めると現地での米国人は25万人に上っている。米軍の朝鮮駐留は減る傾向にあるが、有事の場合にはおそらくイラク以上になると思う。30万人から40万人の間になるのではないか。そのほとんどが朝鮮半島に駐留することになるが、おそらく日本を経由する。朝鮮半島での空軍用スペースが限られているからだ。

――集団的自衛権が行使されると、米軍と自衛隊とはひとつの統合部隊になるのか。それとも協調するレベルなのか。

北朝鮮が日本に対して攻撃を行ったとすれば、日米統合部隊による対応の可能性が高まる。日本に対する猛攻は早い段階で起こり得る。そういう深刻な事態になる以前では、日米は別々の部隊のままだが、事態が深刻になる過程で協調関係はもっと強化されるだろう。

米海軍と海上自衛隊は非常に緊密であり、お互いによく知り合っている。危機の際には速やかに連携できる。米空軍と航空自衛隊もなじみが深い。かなりの共同演習、共同訓練の経験がある。

ある種の日米統合部隊の整備は危機の前段階で効果的になされるだろう。それがすぐにも起こるとは思わないが、最近の政策変更によって、これまで憲法9条の伝統的解釈で制約されていた日米両軍の連携ができるようになる。2つの軍隊は危機の際に間違いなく共同作戦をとることができるようになる。

――軍事作戦の視点からすると、今回の政策変更は始まったばかり、と。

段階的進展だが、それでもかなり大きな進展だ。しかし、これが日本による分水嶺的な決定とまでは言えない。安倍政権が進めようとしている政策は国際的な相互関係について日本がもっと大きな役割を果たそうというものだ。それには朝鮮半島での衝突やその他地域での紛争解決のシナリオや使命も含まれる。

日本は朝鮮半島についてこう見ている。「北朝鮮が実際に衝突を起こして日本に脅威を与えることはなくでも、北朝鮮は日本を嫌いだし、遅かれ早かれ日本を攻撃するだろう。そうであれば、日米同盟を早めに強化すべきではないか。それによって朝鮮半島での衝突をスピーディーに解決できるのではないか」と。

――安倍首相の役割についてどう評価するか。彼は憲法9条が日本の主権を限定し、第二次世界大戦後の“勝利者の正義”で成り立っているとして、憲法9条に反対している。

現状は、前述したように段階的進展をしているにすぎない。安倍政権は進展に向けたドアを開けた。ただし、あまり広く開けることはできないと気付いており慎重ではある。が、明らかに以前よりは広く開いている。

私が心配なのは、その間における日韓関係が泥沼化していることだ。両国は米国民が思っている以上に、民間レベルでの交流をしていると思うが、公式な関係としては、両国の嫌悪感の程度はかなり大きい。いかなる政治的解決も困難な状況だ。両国の政治指導者は事態を悪化させるにまかせている。いまのところ日韓の安全保障協力を深めるのは困難。日韓関係は、いずれもっと高いレベルの敵対関係に漂うことになるだろう。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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