「日米の情報一体化が抑止力向上に繋がる」 マイケル・グリーン氏に聞く日本の安全保障

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――集団的自衛権行使容認で何が最重要な要素か。

1954年の憲法解釈は集団的自衛権を”必要最小限の防衛“という憲法解釈の線上ないしそれを超えると定義している。安倍首相はその決まり文句を変えてはいない。防衛政策は依然として”必要最小限“の防衛能力という概念に準拠しなければならない。

しかし、今回の新しい解釈は米軍や他の同盟国の武器を使用する部隊に対する後方支援は適切であり、必要最小限の防衛の境界線の下にあるとした。新しい政策は、日本の防衛が危機の際には同盟国と共同作業をすることを認めたものだ。これは米国が必要としていたものだ。日本に対し、米国は“戦場での行進”を求めているわけではない。あくまで後方支援だ。

情報の一体化はもっとも重要

――新たに容認された“一体化”を軍事作戦的に翻訳するとどういうことになるか。

最重要な要素は情報の一体化だ。戦争でも抑止でも、戦場をよりよく見ることができる側が勝つ。とくに米軍は、湾岸戦争以来、ますますそのことを学んでいる。これは、基本的に技術であり、空軍、陸軍、海軍、海兵が情報を共有し、戦場について共通のピクチャーを作り上げる必要がある。F35戦闘機がどこに敵機がいるかを知り、同時に海軍駆逐艦もそれを知ることができる、という情報の一体化が必要なのだ。

それは米太平洋軍司令部(海軍と空軍)が本当に必要としていることだ。米軍が情報システムを一体化するに従って、優れた戦場ピクチャーが提供され、一体化した日本と共同で取り組むことができる。

一部メディアが懸念する“戦場で行進をすることになる”という考えは、まったく話にならない。自衛隊が各部隊と相互に情報連携し、かつ米軍と共同作戦ができるようになることは、技術的に絶対に必要なことだ。日米各部隊が共同で同じ脅威を観察するようになると、行動を起こすかどうかの決定が合同でなされ、かつ敏速になる。それは日米同盟をより有効なものにする。

最近、CSISフォーラムで米海軍作戦司令官のグリーナート提督と公開討論をした。彼も集団的自衛権に関する日本の新政策でもっとも重要なところは、情報の一体化と共有だと述べていた。これは日米がますます共同作業を通じてお互いに依存し合うことを意味する。中国は嫌がるだろうが、日米同盟はより活発化し、有事に迅速に対応できるようになる。

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