"ネスカフェ復権"の裏に「古典的戦略」? コーヒー×定石が生んだ、新しい儲けの仕組み

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 セブンカフェ、ネスレのバリスタ、スターバックス、ブルーボトルコーヒー……。激動期を迎え、話題に事欠かないコーヒー業界ですが、そこには世界の「最新ビジネス戦略」が詰まっていました。この連載では、コーヒー界の勝者の戦略から、今、知っておくべきビジネスの潮流と、仕事で役立つ発想法などについて紹介していきます。
なぜ「ネスカフェバリスタ」は成功したのか?

ネットをひととおり調べた私が、「最安値は6000円のようだね」と言うと、妻は「えーっ!」と悲鳴を上げた。

その1年前、わが家はある家庭用プリンタを購入した。さまざまな機種のスペックと価格を比較検討した結果、本体価格1万8000円の機種に決めた。プリンタ・スキャナー・コピーの複合機としては格安で、「いい買い物をした」とすっかり満足していた。ところが1年後、そのプリンタのトナーが切れて、補充しようとしたところ、トナー1本が6000円もすることを知り、夫婦で驚愕してしまった。

「けっこう高いなぁ」と思ったが、プリンタは必需品。トナーを買わない選択肢はありえない。やむなく購入した。筆者と同じような経験をした方は多いのではないだろうか。

製品本体の価格を割安にする一方、後々、必要となる消耗品を“戦略的価格”に設定することで、ガッツリ稼ぐ――。これは、かつてカミソリのジレット社によって編み出された「ジレットモデル」というビジネスモデルだ。キヤノンやゼロックスのプリンタも、これと同じ要領で高い収益を稼ぎ出している。

この仕組みが成立するのは、消費者が目先に支出する本体の価格に目を奪われ、消耗品の価格までは気が回らない、という消費者心理を巧みに活用しているからだ。

俗にこれを「消耗品ビジネス」と言うが、この仕組みをコーヒーの世界で実現した会社がある。インスタントコーヒーの雄、ネスレ日本だ。

コーヒー業界のジレットモデル、それが「バリスタ」

あなたは、インスタントコーヒーの「味」と「手間」に満足しているだろうか。

ヤカンでお湯を沸かしながら、マグカップにインスタントコーヒーをスプーンで1~2杯入れ、適当な量のお湯を注ぐ――。簡単なようでいて、意外と手間がかかっている。しかも、お湯の温度など、そのコーヒーを最もおいしく飲むための条件はそうそう整わない。多くの人は、“そこそこのコーヒー”しか飲めていないはずだ。

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