消費税の引き上げは日本には不要である--リチャード・カッツ
消費税は日本にとって不適切な税である。民主党の敗北は政治的な安定を損なう深刻な問題ではあるが、選挙結果を受けて増税問題が再考されるのはいいことだ。
最終的に日本は巨額の財政赤字に対処するために増税しなければならないことは確かだ。しかし、それが消費税である必要はない。
日本の成長を妨げている最大の障壁は、消費の慢性的な不足であり、その主な要因はGDPに占める家計部門の実質可処分所得の割合が低いことにある。日本では貯蓄率が劇的に低下しているので、所得が増えれば支出も増加するだろう。それなのになぜ消費税増税により実質可処分所得を引き下げ、消費をさらに低迷させる必要があるのだろうか。消費税増税は一部の国にとって好ましいが、日本はそうした国ではない。
鳩山由紀夫前首相は、子ども手当や高校の授業料無料化を通して家計所得を増やそうと試みた。その実施方法はアマチュア的で政策の一部に欠陥もあったが、その狙い自体は正しかった。一方、菅直人首相が主張するように消費税増税を行えば、消費が抑制されて日本の貿易依存はさらに高まってしまう。菅首相が「経済を内需主導に変えていく」という鳩山前首相の公約を民主党のマニフェストから削除したのは、単なる偶然なのだろうか。
消費税引き上げは最後の手段であるべきである。まずは歳入を増やし、同時に成長を促進する代替策を模索すべきだ。
納税者番号制導入と農地の優遇撤廃を進めよ
代替策の一つは納税者番号制の導入だ。脱税を減らすだけで歳入は数兆円も増える。プライバシーを理由に納税者番号制導入に反対するのは、いわゆるクロヨン(課税所得の捕捉率が、サラリーマンは9割、自営業者は6割、農家は4割であることを指す呼称)を温存するための建前のように聞こえる。