消費税の引き上げは日本には不要である--リチャード・カッツ
2004年のインタビューで財務省の高橋洋一氏(当時)は「納税者番号制を導入すれば消費税の5ポイント引き上げに相当する歳入増をもたらす」と語っている。これは菅首相が主張する消費税の引き上げ幅と同じである。高橋氏の推計が過大であったとしても、納税者番号制は導入すべきである。
障害となるのは政治的な要因だ。クロヨンを許すことで自民党は農村と零細小売業を優遇してきた。先の参議院選挙の自民党が得た29議席の大半は地方の一人区のものである。これらの選挙区は人口の29%を占めるにすぎないのに、自民党は議席の40%を獲得した。
菅首相は低所得層に消費税の一部を還元するために、納税者番号制の導入を提案していた。消費税増税が29の一人区での民主党の敗北の隠れた要因ではないかと思われている。だがもし菅首相が「納税者番号制を導入すれば税負担が公平になり、都市部のサラリーマンと高齢者の消費税増税の負担を軽減できる」と説明していれば、都市の有権者の支持を得ることができたはずだ。
もう一つの代替策は、都市部の農業所得に依存しない人が所有する農地への優遇措置を廃止することだ。現在、首都圏には税優遇を受けた農地が膨大にある。
1990年ごろ、旧建設省は東京駅から通勤時間1時間以内にある土地の45%が農地か遊休地であると推定していたが、それ以降、こうした土地はほとんど減っていない。国土交通省によれば、東京、大阪、名古屋の大都市圏において、非森林の土地のうち農地が占める比率は、90年の34%から02年の30%へと若干低下しただけだ。