批判噴き出す「資本主義」は結局、何が問題なのか

財界トップも言及、再注目「宇沢弘文」の思想

経済学者・宇沢弘文氏の思想が再び注目を集めている(尾形文繁)
格差の拡大や環境問題の深刻化を招いているとして、「資本主義」に対する限界論や批判の声が高まりつつある。そんな中で、再び注目を集めているのが、経済学の大家として知られ、ノーベル経済学賞に最も近い日本人と言われた宇沢弘文氏(1928~2014年)が打ち出した「社会的共通資本」という考え方だ。
2021年6月に経団連会長に就任した十倉雅和氏(住友化学会長)は就任のあいさつにおいて、「サステナブルな資本主義」を掲げつつ、宇沢氏の提唱した「ソーシャル・ポイント・オブ・ビュー(市場経済のなかに社会性の視点を入れるという考え方)」に言及している。
では、「社会的共通資本」とは何なのか。宇沢氏が2000年に上梓した『社会的共通資本』から一部抜粋・再構成して解説する。

資本主義の内部的矛盾は1990年代を通じて拡大化

1986年、ソ連共産党書記長であったゴルバチョフによって始められたペレストロイカの流れは、その後、ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、チェコスロバキアを始めとする東欧社会主義体制の崩壊、そして、東ドイツの西ドイツへの吸収という予期しなかったかたちに発展していった。

そして1991年8月、ソ連における保守派によるクーデターの失敗は、ソ連共産党の解体、そしてソビエト社会主義共和国連邦自体の崩壊、さらには世界社会主義の全面的崩壊という、世界史的事件にまで高揚していった。

他方、ベトナム戦争を契機として顕在化しはじめたアメリカ資本主義の内部的矛盾もますます深刻化しつつあり、このことは、1992年4月に起こった、アメリカ史上最大規模のロサンゼルス大暴動に最も象徴的に現われている。この、世界の資本主義の内部的矛盾は、1990年代を通じて、いっそう拡大化され、深刻な様相を呈しつつある。

20世紀がその最後のディケイドに入ったとき、パックス・ソビエトロシアとパックス・アメリカーナという、半世紀以上にわたって政治、経済、文化のあらゆる面で、世界を二分して支配してきた体制がともに崩壊ないしは衰退の過程に入ったことは、私たちにとって無視しえない意味を持つ。

この世紀末的混乱と混迷は、たんなる政治的次元を超えて、私たちの思想的、学問的、そして人間的あり方の根幹にふれるものであって、この問題を避けては、将来の展望をもちえない。

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