批判噴き出す「資本主義」は結局、何が問題なのか 財界トップも言及、再注目「宇沢弘文」の思想

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かつて、アダム・スミスは『国富論』のなかで、論理的整合性のみを基準として想定された経済制度の改革は必然的に、きわめて多様な人間の基本的傾向に矛盾することになることをくり返し強調した。アダム・スミスは、民主主義的なプロセスをつうじて、経済的、政治的条件が展開されるなかから最適な経済制度が生み出されることを主張した。

私たちが、制度主義という経済制度を考察しようとするのは、まさにこのアダム・スミス的な意味においてである。

制度主義の経済制度を特徴づけるのは、社会的共通資本(Social Overhead Capital)と、さまざまな社会的共通資本を管理する社会的組織のあり方とである。

制度主義の基本的性格を明らかにするために、ここでは一般的な場合について述べることにする。

社会的共通資本と私的資本

制度主義のもとでは、生産、流通、消費の過程で制約的となるような希少資源は、社会的共通資本と私的資本との2つに分類される。

社会的共通資本は私的資本と異なって、個々の経済主体によって私的な観点から管理、運営されるものではなく、社会全体にとって共通の資産として、社会的に管理、運営されるようなものを一般的に総称する。

社会的共通資本の所有形態はたとえ、私有ないしは私的管理が認められていたとしても、社会全体にとって共通の財産として、社会的な基準にしたがって管理、運営されるものである。

ある特定の希少資源を社会的共通資本として分類して、そこから生み出されるサービスを市場的基準に基づくのではなく、社会的基準にしたがって分配するというとき、それは、どのような考え方に基づくのであろうか。

この基準は、たんなる経済的、技術的条件に基づくのではなく、すぐれて社会的、文化的な性格を持つ。社会的共通資本から生み出されるサービスが市民の基本的権利の充足という点でどのような役割、機能を果たしているかに依存して決められるものである。

社会的共通資本は、土地、大気、土壌、水、森林、河川、海洋などの自然環境だけでなく、道路、上下水道、公共的な交通機関、電力、通信施設などの社会的インフラストラクチャー、教育、医療、金融、司法、行政などのいわゆる制度資本をも含む。

社会的共通資本は全体としてみるとき、広い意味での環境を意味する。社会的共通資本のネットワークのなかで、各経済主体が自由に行動し、生産を営むことになるわけである。市場経済制度のパフォーマンスも、どのような社会的共通資本の編成のもとで機能しているかということによって影響を受ける。

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