批判噴き出す「資本主義」は結局、何が問題なのか 財界トップも言及、再注目「宇沢弘文」の思想

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社会的共通資本の管理について、1つ重要な点にふれておく必要がある。社会的共通資本は、それぞれの分野における職業的専門家によって、専門的知見にもとづき、職業的規律にしたがって管理、運営されるものであるということである。

社会的共通資本の管理、運営は決して、政府によって規定された基準ないしはルール、あるいは市場的基準にしたがっておこなわれるものではない。この原則は、社会的共通資本の問題を考えるとき、基本的重要性を持つ。社会的共通資本の管理、運営は、フィデュシアリー(fiduciary)の原則にもとづいて、信託されているからである。

社会的共通資本は、そこから生み出されるサービスが市民の基本的権利の充足にさいして、重要な役割を果たすものであって、社会にとってきわめて「大切な」ものである。このように「大切な」資産を預かって、その管理を委ねられるとき、それは、たんなる委託行為を超えて、フィデュシアリーな性格を持つ。

社会的共通資本の管理を委ねられた機構は、あくまでも独立で、自立的な立場に立って、専門的知見にもとづき、職業的規律にしたがって行動し、市民に対して直接的に管理責任を負うものでなければならない。

市民の基本的権利を充足できるか監視するのが政府

政府の経済的機能は、さまざまな種類の社会的共通資本の管理、運営がフィデュシアリーの原則に忠実におこなわれているかどうかを監理し、それらの間の財政的バランスを保つことができるようにするものである。

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制度主義経済体制における政府の経済的機能は、統治機構としての国家のそれではなく、すべての国民が、その所得、居住地などの如何にかかわらず、市民の基本的権利を充足することができるようになっているかどうかを監視するものでなければならない。

さまざまな社会的共通資本の組織運営に年々、どれだけの資源が経常的に投下されるかということによって政府の経常支出の大きさが決まってくる。他方、社会的共通資本の建設に対して、どれだけの希少資源の投下がなされたかということによって、政府の固定資本形成の大きさが決まる。

このような意味で、社会的共通資本の性格、その建設、運営、維持は、広い意味での政府、公共部門の果たしている機能を経済学的にとらえたものであるといってよい。

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