建設受注統計で国交省が不正、その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く
建設業の月々の受注状況を推計し、GDP(国内総生産)算出にも使われる「建設工事受注動態統計」で、国土交通省があきれるばかりの不正を行っていた。遅れて届いた調査票の数字を書き換えて合算し、2013年4月分〜2021年3月分は未回答分を平均値で補完したものとの二重計上となっていたのだ。
まず気になるのはGDPへの影響だが、これはあまり大きくはなさそうだ。
建設受注統計の内訳は土木と建築がほぼ半々だが、土木の部分だけが、月々の出来高を推計する建設総合統計に使われ、それがGDPに反映される。土木のうち公共事業の部分は後から財政データで上書きされる。二重計上の影響が残っている民間土木は建設投資の1割程度で年間6兆~7兆円、GDP全体の1%程度だ。
ユーザー軽視、何のための統計なのか
建設受注統計そのものの金額は二重計上でどのくらい増えていたのだろうか。
これはわからない。2019年分までは国交省は、都道府県に調査票の数字を消しゴムで消して書き換えさせていたといい、月ごとの数字が失われてしまっているからだ。調査票の元データが失われて復元推計ができない点は、3年前の「毎月勤労統計」(所管は厚生労働省)の問題よりも深刻といえる。
ただ、国交省が会計検査院の指摘を受けた後、自ら合算を行っていた2020年1月分〜2021年3月分については、当月に入力した調査票データと、書き換え合算を行ったデータの2つがあり、他の条件をそろえて受注高を算出比較すれば、二重計上のインパクトがわかるはずだ。
2020年1月分〜2021年3月分については、参考値との差額として「平均して1月あたり1.2兆円」という数字が国会答弁で出ているが、これは二重計上によって生じた数字ではない。二重計上のとりやめで生じたマイナスと同時に行われた推計方法の変更によるプラスとを合わせた数字だ。
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