建設受注統計で国交省が不正、その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く

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――会計検査院の報告書によると、現在は都道府県の経費をのぞいて年間600億円程度です。

肥後 その値段では民間ではとても作れない。きちんとした統計を作るにはお金がかかることを理解してほしい。今は安上がりである分、問題が多い。統計部署に限らないが、行政では人事ローテーションが短いうえに任期制職員も多く、専門的知識を組織のなかで継承することが難しくなっている。民間のほうが人材は充実しているから品質が上がる。

――民間委託とすることにも問題点はありますか。

肥後 公的統計を民間にどこまで任せていいのかという問題はある。個別の契約で守秘義務を遵守するように民間業者を縛っているとはいえ、調査対象者は、企業や個人の情報が漏れるのではないかと心配になるだろう。

それに、統計作成を民間任せにすると、役所の中でどんな統計を、どのように作成するかという企画立案ができなくなる。調査対象者が回答できないような調査項目を作ったりする。役所が統計の作成にしっかり関与して、外注するのは末端の業務だけにしなければ、統計部署が空洞化してしまう。

「不正」よりも「欠陥統計」が問題

――統計をめぐる体制の問題としては、3年前の毎月勤労統計問題を受けて、統計委員会が基幹統計を一斉点検していたのに、建設受注統計の不正は見過ごされていました。

肥後 統計委員会にマンパワーが足りない。常勤の委員はおらず、事務局は委員会の運営で手一杯だ。点検対象とする統計を絞り、徹底的に調べるべきだと意見したのは私だけではなかったが、基幹統計を網羅することが優先された。56もの基幹統計を限られた期間で見るには、各省庁に統計ごとに調査票を記入させ、問題が見つかったと自己申告してきたものを取り上げるしかなかった。自己点検だった。

――どうすれば不正を見つけられるのでしょうか。

肥後 チェック体制には3段階ある。現在の自己点検、相手の同意をもとにした点検、それに強制力を持った検査だ。自己点検では実効性がないことが今回わかった。

――今回、調査票の書き換えを発見したのは、検査権限を持つ会計検査院でした。

肥後 強制力を持つ統計監督機関を設けるには、法体系を変えなければならない。不正があまりに多く、摘発が最優先であれば検討されるべきだろうが、強制力のある組織では統計精度の改善はできない。不正がそこまで多くなく、省庁と協力して統計精度を改善する必要があるのなら、統計委員会のようにフレンドリーな組織のほうがいい。

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