HowよりWhyを聞くほうが話を引き出しやすい訳 インタビューのプロが明かす専門家取材の流儀

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だからこそ、気をつけたのが、インタビューです。本物の科学者たちですから、聞こうと思えば、とんでもない専門領域の話も聞けるでしょう。しかし、それは私には理解できないし、記事にすることもできない。読者は一般の人だからです。

そこで私がインタビュー前に必ず伝えていたことがありました。

「申し訳ありません。私はバリバリの文系です。資料はいろいろ見てきましたが、難解なものばかりでした。理系の知識がない私にも、わかるように教えてください」

このとき、改めてすごいと思ったのですが、本物の科学者というのは、難しい話もやさしく解説できる力をしっかり持っている方々だということです。逆に、わかっていない人は、難しい話を難しい話としてしか語れない。本物であることのすごさを強く認識したのでした。

そして、私のわかる範囲、わかるレベルでどんどん話を引き出していきたいわけですが、そのために、このフレーズを連発しました。

「もしこの領域について基礎知識がない読者が目の前にいるとしたら、どんなふうに説明いただけますか」

難しい話を、難しい話のまま聞いていたら、理解はできません。だから、最初から「やさしく解説してください」とお願いしてしまう。そうすることで、相手はわかりやすく話してくれるようになります。ただし、言わなければ、相手にはこちらのレベルがわかりません。わからないことより、わからないまま聞いていくほうが余程、問題なのです。その認識をしっかり持っておいたほうがいい。

ネガティブな話は一通り聞き切ったほうがいい

難しい話と並んで、大変なコミュニケーションに、ネガティブな話があります。聞きたい話の前に、ネガティブな話が始まってしまう。愚痴だったり、後悔だったり、悪口だったり……。

『引き出す力――相手が思わず話してしまうひとつ上の「聞く力」』(河出書房新社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

そんな話をされても、と思っても、できるだけ止めないほうがいいと思います。したくてしている話だから。

なので、ネガティブな話が始まったら、一通り聞き切ることにしています。そうしないと、次に進めないから。いい話を引き出すことは、難しいと思えるから。あえて、ネガティブな話をしてくるのは、意味があると思うのです。

そしてやってはいけないのは、相手の話に感情的になることです。ネガティブな話に、ネガティブに反応してしまう。「なんでこんな話を」「本題と違う」「つまらないなあ」……。こうした感情的な反応は、相手に伝わってしまうと私は思っています。

ネガティブな話は、こちらが試されている話でもあるのです。

前回:3000人超を取材した男の「話の引き出し方」絶妙技(1月8日配信)

上阪 徹 ブックライター

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うえさか とおる / Toru Uesaka

ブックライター。1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒業。ワールド、リクルート・グループなどを経て、1994年、フリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍、Webメディアなどで幅広くインタビューや執筆を手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品は100冊以上。2014年より「上阪徹のブックライター塾」を開講している。著書は、『1分で心が震えるプロの言葉100』(東洋経済新報社)、『子どもが面白がる学校を創る』(日経BP)、『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)など多数。

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