HowよりWhyを聞くほうが話を引き出しやすい訳 インタビューのプロが明かす専門家取材の流儀
さて、話はさかのぼるのですが、通訳が入ることで、自分の取材のクセに気づいたのも外国人取材でした。まだ、フリーランスになって3年目。ハリウッドの映画監督にインタビューしているときでした。
通訳はとても見事に訳してくださっていたのですが、自分でも気づき始めました。私の質問は「How(どうすれば)」から始まる質問がやたら多かったのです。やがて監督は、「どうしてこの人はHowばかり聞くんだ?」と言い始めました。
日本人は「How」が好きなのです。それこそ、書店に行けば「How」を記した本がたくさん並んでいます。雑誌の特集でも、ウェブサイトでも支持を得る。しかし、注意しないと「How」に支配されかねないのです。
これは部下と上司の関係にも当てはまります。
実際、部下が上司から仕事の依頼を受けるとき、やってはいけないことがあると思っています。それは「How」ばかり聞き出すことです。「どうやってやればいいですか」ばかり聞いてくる部下を、上司はどう思うでしょうか。
上司や経営陣からよく挙がってくる声に、「言われたことしかやらない」がありますが、命令されて方法論を聞くだけでは、まさに言われたことをしているだけです。では、どうすればいいのかというと、「Why」をこそ聞き出すのです。
「なぜ、この仕事をやる必要があるのか」から聞く。その意味を理解して上司の命令を実行するか、そうでないか。上司はどちらを評価したくなるでしょうか。それこそ「Why」から聞いてくれる部下なら、上司は安心できると思いませんか。
命令するのではなく、質問をして気づきを与える
一方、「言われたことしかやらない」は、上司にも課題があります。それは、ついつい命令してしまうから。言ってしまうからです。リーダー論の本には必ず書いてありますが、部下に気づかせることこそが優れたリーダー。そのために必要になるのが、聞き役に回ることです。
部下に質問をして、その答えを上司はじっくり聞く。そうすることによって、何をしなければいけないのか、に気づいてもらう。単に命令するのではなく、自分の気づきになれば、それは「上司に頼まれた仕事」ではなく「自分の仕事」になります。
上司は、部下にいい仕事を与えてくれる存在になるのです。自分に命令する人ではなく、自分を応援してくれる人に映るのです。
こういう関係性を上司と部下で作れたら、コミュニケーションは円滑になっていくはずです。「部下の本音がわからない」「本当の気持ちを引き出せない」といった上司の悩みも、関係性によるところが大きい。
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