「工事費高騰」マンション大規模修繕に深刻な影響 築40年超のマンションは現在103.3万戸もある

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2013年の秋以降、マンションの大規模修繕工事費の高騰が続いている(写真:KazuA/PIXTA)

最新設備を有し、どれだけ堅牢なつくりのマンションであっても、竣工から年を重ねると劣化が目立つようになる。適切なメンテナンスを行わないままではマンションの外観や機能面が低下、居住性が悪くなっていく。場合によっては安全面でのリスクも考えられ、資産価値にも影響しかねない。おおよそ12年に1度の周期で大規模修繕工事が必要になるのはそのためだ。

ところが、2013年の秋以降、工事費の高騰が続いている。原因の1つとも言われていた東京オリンピックが終わった現在も、高止まりの状態に変化はない。

工事価格が突如高騰した5つのワケ

2000年頃から2013年春先までの建設工事価格は安定していた。しかし先述のように、同年の秋頃から一気に20~30%も工事費がアップすることになる。これには次の5つの要因が関係していた。

1. アベノミクス効果への期待
2. オリンピック誘致の成功
3. 消費税増税前の駆け込み需要
4. 震災復興特需
5. 慢性的な人手不足

順に見ていこう。2008年のリーマンショックで打撃を受けていた建設業界は、翌年の「公共事業削減」を掲げる民主党・鳩山由紀夫政権の誕生でさらなるダメージを負った。ところが2012年、民主党政権から再び自民党が政権奪回し、風向きが変わる。

安倍晋三首相は「3本の矢」を柱とする経済政策、アベノミクスを表明。2本目の矢に財政政策として公共事業を据えたことで、アベノミクスへの期待値が高まっていく。2013年9月には2020年のオリンピック開催地に東京が選ばれた。これにより、長らく公共事業の削減と景気停滞に苦しんできた建設業界は一転、「オリンピック特需」に沸いた。

2011年に起きた東日本大震災からの復興需要もあり、上昇基調にあった建設業界。「復興」と「オリンピック」の2つの特需で、人手不足が深刻な問題となっていた。さらに同じ年、2014年4月に消費税率が現行の5%から8%に引き上げられることも決定された。

そのため、増税前に大規模修繕工事をと多くのマンションが駆け込み実施を行っている。これら5つの要因が同時期に起こったことで建設ラッシュの発生が見込まれることから、工事費の高騰に拍車がかかることとなったのだ。

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